<阪神5-1巨人>◇11日◇甲子園

 無敵のマーでG倒や。阪神は、今季初の本拠地甲子園での巨人戦でマット・マートン外野手(32)が輝いた。6回に天敵杉内から決勝3ランだ。チーム今季初の3連勝を呼び込み、4度目の挑戦でこちらも今季初めてとなる貯金ゲットに成功。さあ、勢いに乗って、カード勝ち越しも狙うで~。

 マンモス甲子園が狭く映った。絶好調のマートンが放った弾道は驚異的だった。両チーム無得点の6回、目の前でゴメスが四球で歩くと奮い立った。2死一、二塁になり、杉内は四球厳禁の局面だ。際どいコースに執着しづらい投手心理を見透かす。3球目の甘い直球を容赦なくたたくと、低いライナーで右翼ポール際に飛び込む。先制の5号3ランで強敵を突き放した。

 「前でしっかり四球を選んで、相手投手はこれ以上歩かせられない。ああいう形で、打てる球を投げてくる状況になった。打ったあとは二塁打かなという感じだったけど、甲子園のポール際は狭い。風もあった」

 打率4割7分9厘、25打点を刻み、本塁打とともに、再び「3冠」に君臨。いや、安打数や塁打数、出塁率、長打率を加えれば「7冠」だ。その勢いは、天敵杉内さえものみ込んだ。巨人打線のお株を奪う1発での白星に、和田監督も「打ってくれという気持ちでいたけど、1点じゃなく、3点取れたのが大きい」と声を上ずらせた。

 来日5年目に入り、すっかり日本流だ。今年から本拠地の打席に入る際、日本語のBGMが流れる。新たに、北海道・札幌を拠点とする日本人バンド「ナイトdeライト」の「Stain」を勝負曲に選んだ。マートンは「これまではいいのを見つけられなかったけど、日本語の歌をやりたかったんだ。知人の知人なんだよ」と笑う。

 異国での生活を楽しむ一方で、頑固な一面も。不変なのはプロ意識の高さ。09年までは米大リーグでプレー。346試合に出場し、メジャー流が息づいている。猛者ぞろいのイメージが強い米球界だが、ロッカーではモニターとにらみ合う選手が数知れず。試合での打撃を振り返って理想を追求するが、マートンも甲子園での試合後、クラブハウスに戻ると、ビデオ室に足を運ぶ。準備が好打の礎だ。

 「自分のベストを尽くして毎打席、入っているからね。6回までランディが素晴らしい投球をしていたし、1点でも入ればいける気持ちがあったからね」

 3月の開幕カードは巨人の圧倒的な破壊力に屈したが、甲子園で反撃。今季初の貯金を生んだ。無敵のマートンとともに、さらに上げ潮ムードといこう。【酒井俊作】

 ▼マートンが杉内から先制3ランを放った。これで今季は左腕投手に対して12打数9安打、3本塁打、16打点、打率7割5分の大当たりだ。杉内に対してはソフトバンク時代も含め昨季まで通算打率1割7分8厘(45打数8安打)と抑えられたが、今季は3打数2安打、6割6分7厘だ。

 ▼マートンは早くも25打点。昨年は満塁で1割5分4厘、走者2人の場面でも2割3分6厘の低打率だったが、今季は走者2人で打率5割3分3厘の13打点、満塁は10割の6打点。走者がたまった場面で抜群の勝負強さを見せ、打点を荒稼ぎしている。

 ▼マートンは打撃部門で打率、安打数、本塁打、塁打数、打点、出塁率、長打率でトップ(本塁打はタイ)。Vに導いた85年3冠王バースの13試合消化時点と比較しても、打点、打率、安打数、出塁率、長打率で上回っている。