侍ジャパンには筒香嘉智外野手(25)がいる。第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の初戦となるキューバ戦に臨み、1回に先制タイムリーを放った。さらに7回2死一塁からは右中間スタンドへ2ランを放り込んだ。不動の4番を任された重圧から、試合当日の早朝までホテルの部屋でバットを振り込んでいた。重圧を自信に変え、世界一の奪還に向けてチームを引っ張っていく。今日8日はオーストラリアと対戦する。

 無心だった。筒香が豪快にバットを振り抜いた。3点差に詰め寄られた7回2死一塁、キューバ5番手のJ・マルティネスの内角高めの直球を強振。打った瞬間に分かる1号2ランを右中間席へ突き刺した。快勝ムードだった7回に2番手則本が打ち込まれ3失点。主砲が傾きかけた流れを一撃で引き戻し、とどめを刺した。「手応えはなかった。何で入ったのか分からない。でも、勝ったことが一番。形ではなく結果が全て。調子がいい、悪いは関係ない」とうなずいた。

 開戦の合図も筒香のバットだった。1回2死二塁。先発エンテンザが投じた内角膝元のスライダーに体勢を崩されるも、詰まり気味の打球を強引に右前に落とした。「1回表の菊池さんのプレーや、青木さんの思い切りのいい打撃が作ってくれた流れに乗れた」。先制適時打で口火を切った。

 自身初のWBCで4番を任された。25歳の青年にかかる重圧は計り知れない。不安との闘いを球場入り前に解決していた。「不安がなくなるまで素振りをしました。僕は寝なくても大丈夫なので」。前夜はホテルの部屋でひたすらバットを振り込み、気付くと試合当日の朝6時前だった。「映像を見ながらだったので時間がかかっただけ。途中から楽しくなってきた。もう不安はない。あとはやるだけです」。不安を喜びに変えて本番の打席に入った。