<第60回NHK紅白歌合戦>◇12月31日◇NHKホール

 NHKが長年出演交渉を続け、待望していた矢沢永吉(60)が、白組特別出場歌手として楽屋口から歩いて登場する演出で出演。会場はサプライズゲストに大いに沸いた。対する紅組は初来日した英歌手スーザン・ボイル(48)が美声を披露した。SMAPがマイケル・ジャクソンさんの追悼コーナーで華麗なダンスを見せ、福山雅治(40)が故郷長崎から中継で歌った白組が5年連続で勝利した。通算成績は白組の32勝28敗。

 紅白60年の歴史に新たな1ページが刻まれた。ロックスター矢沢永吉がデビュー38年目で初めて紅白のステージに立った。

 ビッグスターに、同局も異例の演出で迎えた。楽屋通路のスタンバイの様子からステージに上がるまでをカメラが中継。「カモンッ」と自らに気合を入れ、永ちゃんがステージに飛び込むと、約3000人の会場の興奮は最高潮に達した。代表曲「時間よ止まれ」と新曲「コバルトの空」をシャウト!

 「時間よ-」で歌詞を間違えると、それ以降は画面のテロップから歌詞が消えた。「今日、60回ですよね。この区切りにホント、出られて幸せです」。歌い終わると、滞在わずか7分ほどでNHKを後にした。

 これまで、何年にもわたって熱心なオファーがあっても固辞し続けた。国民的な歌番組として、幅広いジャンルの歌手が出演する紅白と、矢沢のロック魂は相いれないことが理由とされてきた。だが、矢沢も紅白も還暦という人生の節目。「今年の集大成にしたい」と出演を決めた。

 NHKは矢沢の出演を1度はあきらめた。歌手発表の際は「今日までに回答を得られませんでした」「検討するとのことだったが…」と未練たらたら。ところが、その後も粘り強く水面下で交渉を継続。年末のステージに引っ張り出した。本番前日、名前を伏せたままサプライズゲストの出演を緊急発表した。

 永ちゃんは08年をデビュー以来、初の完全休養にあてた。ステージに立たずCDも発売せず。「1度歩みを止めたらいろんなものが見えた」という。音楽やスタイルに徹底的にこだわって突っ走ってきたロック界のスーパースターが、全国のファンにちょっと早いビッグなお年玉を贈った。

 [2010年1月1日12時51分

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