テレビ朝日は4日、1月28日にBS朝日の番組収録中、女性アイドルグループ「3B

 junior」の12歳のメンバーが倒れて意識を失い、緊急搬送されたと発表した。同局によると専門医は、ヘリウムガスを一気に吸ったことが原因とみている。現在も入院中で回復の兆しはみせているが、意識が十分に戻っていないという。

 都内の同局でテレビ朝日の幹部が会見した。アクシデントは、東京・六本木の同局内のスタジオで行われたバラエティー番組「3B

 joniorの星くず商事」(土曜深夜3時)の収録中に起きた。番組内のゲームで、声を高く変えるパーティー用のヘリウムガスが入ったガス缶を一気に吸った直後に倒れたという。

 メンバー26人が5組に分かれ、各組5人(1組だけ6人)の中で本当のヘリウムガスを吸った1人を当てるゲームだった。倒れたメンバーは2組目で、1回目で当たりが出ず、全組が終えた後で再度ゲームを行った。同局では、1回目に声が変化しなかったが、連続してヘリウムガスを吸った可能性もあるとしている。他の4組でガスを吸ったメンバーに異常はなかった。

 倒れて意識を失った直後に、スタッフが119番で救急搬送を要請した。その6分後に救急車が到着し、都内の病院に運ばれ、応急処置を受けた。その間もスタッフが呼び掛けを行いながら、人工呼吸などの処置がとられた。さらに別の病院に運ばれ、専門医から「脳空気塞栓(そくせん)症」と診断されたという。脳の血管に空気が入り、血流が妨げられている状態だった。

 鎮静剤の使用などで意識の混濁が続いたが、担当医は「まだ意識は十分に戻っていないが、目を開き、水を飲み、手が上がるようになり、声を出そうとしている。今日(4日)から食事もとり始め、回復の兆しが見えている」と話しているという。

 同局によると、使用されたヘリウムガスは「ヘリウム80%、酸素20%」の市販のパーティーグッズ。5500ccが缶に封入されており、「大人用」と記されていた。また「通気の悪い狭い場所で使用しない」「疲労時は使用を控える」などの注意書きもあったという。このガスを吸って脳空気塞栓症になることについて同局は「国内に症例はないが、海外にあるらしい」と説明した。

 また同局は専門医から「原因はガスを一気に吸ったことによるものではないか」と言われたとしている。「よくあるグッズで、番組プロデューサーも何回も使っている製品。ただ『大人用』をはじめ、いくつかの注意事項をスタッフが見落としていたなど、収録時の安全管理に問題があった可能性もあり、深く反省している」とした。警視庁は同局から届け出を受け、業務上過失傷害の疑いがあるとみて、調べを進めている。

 ◆3B

 junior(スリービージュニア)

 大手芸能事務所スターダストプロモーション所属。かつては高校生以下のタレントが歌やダンスのレッスンを積むための組織だったが、昨年からアイドル育成に特化して再編成。ももいろクローバーZや私立恵比寿中学のメンバーも所属していた時期がある。メディアなどで「ももクロの妹分」と表現される場合もある。

 ◆ヘリウムと空気塞栓症

 厚労省によると、ヘリウムガスの吸い過ぎで意識を失ったり嘔吐(おうと)したりする事故は00~12年度で32件が報告され、07年には茨城県の高校でヘリウム濃度がほぼ100%の風船用ヘリウムを吸って窒息死する事故が起きている。しかし、酸素が20%入っているパーティーグッズの重大事故はほとんどない。

 空気塞栓症はダイバーの死亡原因で最も多いことで知られる。ダイバーの症例を通じて空気塞栓症に詳しい山見信夫・山見医院副院長は、(1)ヘリウムガスを何回も吸うことで過呼吸状態になり、たまたま肺が破けて血管の中にガスが入った(2)ヘリウムと窒素のガス交換の際にヘリウムが気胞(きほう)化した(3)脳血管の病気がたまたまあり、過呼吸で血管が収縮した際に発作が起こった、という3つの可能性を指摘したが、「めったに起こらない。極めて珍しい」と話している。