<陸上:織田記念国際陸上>◇最終日◇29日◇広島ビッグアーチ

 沢野大地(31=富士通)が久しぶりに国内選手に競り負けた。男子棒高跳びは沢野と荻田大樹(24=ミズノ)、山本聖途(20=中京大3年)の3人が5メートル60の五輪B標準をクリア。沢野と荻田の2人は試技内容でも決着がつかず、勝負はジャンプオフ(優勝決定試技)に持ち込まれた。その最初の5メートル65を荻田がクリアしたのに対し、沢野野が失敗して決着した。

 沢野が最初の高さに失敗する“記録なし”で負けたことはあるが、今回のように競り負けたのは「大学3年か4年以来」という。約10年ぶりのことだった。

 2004年以降は沢野ひとりの力が突出し、五輪や世界陸上には単独で参加してきた。2番手選手が伸びてきたのは北京五輪以降のこと。2009年のベルリン世界陸上で鈴木崇文(24=ミズノ)が代表に加わり、今年になって荻田が3回、山本が1回B標準に成功している。現時点では澤野ひとりだが、今後A標準を跳ぶ選手が現れれば複数での五輪参加も可能になる。「日本の棒高跳びがこういう状況になるのは望んでいたこと」と言う沢野だが、「負けたのは本当に悔しい」と本音も漏らす。「でも、日本でこういう気持ちを味わえるのは嬉しいことです」。長年第一人者のポジションを背負ってきた者にしか言えないコメントだった。