<岐阜国体:陸上>◇9日目◇7日◇岐阜長良川競技場

 成年男子1万メートル競歩にはロンドン五輪代表6人中5人が出場。前半は5人が先頭集団で歩を進め、さながら競歩オールスター戦の趣となった。優勝したのはロンドン五輪20キロ競歩で途中先頭を歩いた鈴木雄介(24=富士通)で40分10秒16。2位にも20キロ競歩代表の西塔拓己(19=東洋大)が40分11秒71のジュニア日本新で入り、3位に50キロ競歩代表の森岡紘一朗(27=富士通)が40分34秒04で続いた。

 レースは8000メートル手前で鈴木と西塔の2人に絞られると、8900メートルで西塔がスパート。10メートル差をつけて勝負あったかに見えたが、鈴木が最後の1周で猛追し残り250メートル付近で逆転した。「最後は僕も余裕があったわけではありませんが、ラストで逆転できる差で我慢できました。ラスト2周はいつもの練習のイメージで、上手く西塔君を抜くことができました」。

 鈴木はロンドン五輪も2011年のテグ世界陸上で8位入賞したときも、序盤でトップを歩いてきた選手。終盤での勝負は近年では珍しい。「前半は余裕を持っていて相手の出方を見て、5000メートル過ぎに集団を絞ろうとペースを上げました。後半も主導権を握って展開したレースは数回しかやったことのないパターン。そこが収穫でした」。

 2位の西塔はジュニア日本新にも「暑さはありましたが、もう少しタイムを狙いたかった」と、笑顔はなかった。9月の右脚の脛を痛めて2週間練習が積めなかった反省もあったが、西塔の意識が高くなっていることの表れだろう。

 1964年の東京五輪に6人が出場しているが、その後の競歩代表は多くても4人。五輪代表5人が同じレースに出場したケースは過去半世紀なかった。「ロンドンでは森岡さんの10位が最高でしたが、今の代表選手の力は確実に入賞、メダルに近づいています。高いレベルの選手が5人そろったなかで1位を取れたことはうれしいですし、みんなで入賞、メダルを狙うようになっていきたい」

 以前は“地味な種目”として見られていた競歩が、今や陸上競技のなかでも有望種目になっている。日本競歩陣の勢いが表れていたレースだった。