<岐阜国体:陸上>◇最終日◇9日◇岐阜長良川競技場

 ロンドン五輪男子4×100メートルリレー5位入賞のアンカーだった飯塚翔太(21=中大)が、静岡県チームのアンカーで出場。先行する東京を逆転して39秒70で3連覇を達成した。

 五輪代表選手にとって秋の試合で難しいのはコンディショニング。オリンピックで極限まで自身の状態を高めるため、どこかしらに不安を抱えて臨むことも多い。うまく対処できないと大きなケガにつながってしまう。

 飯塚も9月の日本インカレで100メートルに優勝したが、200メートルの予選で左脚太もも裏がけいれん。完走はしたが準決勝以降を棄権している。国体出場が危ぶまれたが“走ることのできるケガ”だったため、個人種目は回避したがリレーには強行出場した。「脚が良くなくてトレーニングが積めていません。本数をこなすのはきつかったですけど、しっかりと4走の仕事をしようと思いました」

 飯塚は高校3年時の新潟国体少年A100メートルに優勝したが、4×100メートルリレーの予選で脚を痛めた。そのときは“走れないケガ”で準決勝以降を棄権。静岡は準決勝落ちした。

 その経験を生かした飯塚はその後、“走れないケガ”を回避できる選手になった。一昨年は世界ジュニア(200メートル金メダル)、昨年はユニバーシアード(200メートル準決勝)と夏の国際大会にピークを合わせたが、秋の国体にも出場してリレーの2連勝に貢献。

 今年5月の関東インカレでは100メートル優勝後に違和感を感じ、200メートルとリレーを回避したが、6月の日本選手権200メートルではきっちり2位に入って五輪代表を決めた。朝原宣治さんも以前「飯塚君は危険を察知してやめることができる選手」と話していた。

 その一方で、ウサイン・ボルト(26=ジャマイカ)ら世界のトップ選手と走ってきた意地もある。国内大会でそれなりの走りを見せることが、トップ選手に求められていることだと認識している。「国体という雰囲気を楽しみつつ、オリンピックをイメージして緊張感をつくり、アドレナリンを出すことも重要だと思います」

 自身をコントロールして、その大会に合った走りができる選手。飯塚の調整能力は世界で戦っていく上でも大きな武器となるだろう。