<高校総体:陸上競技>◇4日◇岩手・北上市◇決勝

 今年も1年生の最速女王が誕生した。陸上女子100メートル決勝で、埼玉栄・土井杏南が中盤からスピードに乗ると連覇を狙った創志学園(岡山)・青木益未(2年)らを一気に抜き去り11秒88で制した。5月に高校歴代2位の11秒60を記録した速さを大舞台でも見せた。

 まだあどけなさの残る1年生の笑顔がはじけた。土井の胸に金メダルが輝いた。初めて臨んだ全国総体で、圧倒的な強さを見せつけ、新女王になった。「緊張もなく、自分の走りができた。インターハイで優勝することを目標にやってきた。すごくうれしいです」。

 スタート直後は、昨年優勝の創志学園の青木に先行された。それでも「自分の武器は中盤以降の加速だと思っている。意識はしなかった」。自分の力を信じて、ただ前だけを見て必死に走った。力強いフォームでぐんぐん加速。30メートル過ぎには先頭に並び、勝利を確信した。他の追随を一切許さずに、ただ1人11秒台でゴールに飛び込んだ。

 大会2週間前に世界ユースに出場。6月には日本選手権で日本女王の福島千里と肩を並べて走り、4位に入賞した。この大きな経験が生きた。朝霞一中時代は、全国中学校体育大会で100メートル2連覇と敵なしだった。「自分よりも速い人と走れたことで、いい経験になった。だからこそ今日はすごく冷静に走れた」。日々の練習からリードを許した展開をイメージして調整、大舞台で結果を残した。

 最後に土井は「将来はオリンピックに出たい。そのためには、目の前の1つ1つに全力で取り組むことが大切だと思う。今日の優勝だけじゃなくて、200メートル、400メートルリレーでも優勝。3連覇も目指していきたい」と意欲を見せた。着実に夢へと向かっている。【前田和哉】