陸上の女子1万メートルで北京五輪代表を目指す絹川愛(18=ミズノ)が涙で決意表明した。1日、大阪市内でスポーツ用品総合メーカーのミズノの入社式に出席。自分の活躍する姿を見るのを楽しみに、祖母愛子さん(83)が白内障の手術を受けたことを告白。昨年の大阪世界選手権代表のホープは、年末から故障続きで調整遅れが心配されるが、祖母の思いにこたえるためにも、北京切符をつかむことを誓った。

 唇は震え、まぶたからは今にも涙がこぼれそう。それでも視線を落とすことなく、絹川は北京五輪への断固たる決意を口にした。入社式直後の会見。故障続きの現状で「心の支えは?」と聞かれると「これを言うと泣いちゃうんですけど…」と、祖母愛子さんとの約束を打ち明けた。

 絹川「おばあちゃんが(3月中旬に)白内障の手術を受けたんです。『まだ見えるのに手術するの?』と聞いたら『五輪で活躍するメグの姿をはっきり見たいから』って…。おばあちゃんはもう80歳を過ぎているし、次の五輪なんて言ってられない。(北京五輪に)出るしかない」。

 苦難も乗り越えてみせる。昨年12月に腰痛を訴えて全国高校駅伝を欠場、今年2月には左ひざの靱帯(じんたい)も痛めた。「落ち込んで(陸上を)やめようとも思った」。どん底の18歳を奮い立たせたのが、仙台から遠く離れた長野に住む愛子さんの存在だった。

 現在も左ひざの痛みは完治せず、最悪の場合、五輪切符のかかる6月の日本選手権へぶっつけで臨む可能性もある。女王福士らに挑む五輪代表争いは過酷だが、すでに参加標準記録A(31分45秒)を突破したアドバンテージもある。あきらめるわけにはいかない。

 絹川「まずは日本選手権へ全力を尽くしたい。おばあちゃんの冥土のみやげに…イヤ、違う、おばあちゃん、ゴメン」。

 慌てて言い直すと、ようやく顔にいつものスマイルが戻った。いばらの道を切り開き、北京ではとびっきりの笑顔を見せるつもりだ。【太田尚樹】