陸上男子ハンマー投げの室伏広治(33=ミズノ)の北京五輪銅メダル獲得が3日、決定的になった。室伏は8月17日の競技で5位になったが、同種目で銀、銅メダルを獲得したベラルーシ2選手のドーピング違反が発覚した。近日中に2選手の失格が確定する見込みで、順位が繰り上がる。室伏は繰り上がりで金メダルに輝いた前回の04年アテネ大会に続いて、2大会連続のメダル獲得となる。

 室伏に、再び「繰り上がり」の報が舞い込んだ。競技後のドーピング検査で陽性反応を示したのは、2位のデビャトフスキーと3位のチホン。ともにベラルーシの選手で、チホンの代理人は「(筋肉増強効果のある)テストステロンの数値に問題があったと聞いている。ベラルーシ連盟が対応している」と話した。

 関係者によれば、違反を確定するための予備検体の検査でも陽性反応が出ており、近日中にもドーピング違反による両選手の失格が決まる見込み。00年9月に2年間の資格停止処分を受けたデビャトフスキーは今季7月になってから急激に記録が伸びた。また、アテネ五輪銀、昨年まで世界選手権3連覇のチホンは05年に世界記録に1センチと迫る86メートル73をマークしたが、これも記録公認に義務づけられるドーピング検査を回避するため、わざと1センチ足りなく「調整」したともいわれた。以前から疑惑があった両者だけに、関係者も「やっと捕まったということだ」と話しているという。

 アテネ五輪で金メダルが決まった後、室伏はメダルの裏に書かれたギリシャの古代詩を引用した。「真実は競技会だけで明らかになる」。北京では直前に再発した腰痛で満足な投てきができず、5位に終わった。それでも「自分の力は出し切ったし、悔いはありません」と、言い訳もせずに3度目の五輪を終えた。

 「ドーピング違反ゼロ」を目指した北京五輪では、大会前から抜き打ちの検査を実施。特に陸上は、過去にも重量挙げなどと並んで違反が多く、国際オリンピック委員会(IOC)の標的にもなっていた。大会前にはロシアの陸上7選手の違反が発覚。大会中にも、女子7種競技のブロンスカ(ウクライナ)が銀メダルをはく奪されていた。

 室伏のメダルが確定すれば、日本の総メダル獲得数は26になる。陸上の「薬物禍」という問題の中で、喜んでばかりはいられない繰り上げメダル。それでも、日本の陸上男子では、棒高跳びの西田修平(32年銀、36年銀)以来の2大会連続メダル獲得という快挙だ。