<陸上:南部記念>◇12日◇札幌市円山陸上競技場

 世界選手権代表の寺田明日香(19=北海道ハイテクAC)が、100メートル障害で13秒05の自己ベストタイをマークして、初優勝を飾った。寺田にとって今回が世界選手権(ベルリン、18日開幕)前の最終レース。日本記録の13秒00に0秒05差と迫る好タイムを日本選手権に続き連発し、好調な仕上がりを見せた。同じく世界陸上代表の佐藤真有(26=ナチュリル、帯広南商高出)は400メートルに出場し、53秒76で2位だった。

 寺田が世界前哨戦を理想的な形で締めくくった。スタートから一気に飛び出すと、2位石野に0秒21差をつける完勝で同大会初の女王となった。タイムは6月の日本選手権(広島)でマークした自己ベストに並ぶ13秒05。故郷北海道で生み出した好タイムに寺田は「地元でいいレースがしたかったのでうれしい。気持ちよかった」と喜んだ。

 力は本物だ。この日は日本選手権より緩い追い風1・6メートル。北海道ハイテクACの中村宏之監督(64)も「びっくりした。ゴールまで楽に走っている。円山は高速トラックではないが、風のない中で記録を出せるのは安定した力がついてきた証拠」と言う。課題の1台目のハードルまでの加速も万全で、一発勝負の今大会でも落ち着いて走れるメンタル的な強みもアピールした。

 “ほほ笑む走法”で初の大舞台に挑む。「緊張したことがない。走っているときは楽しいから自然とリラックスした表情になる。ベルリンでも笑顔で、いつも通りのレースをすれば必ず記録は伸びる」。スタートの瞬間まで真剣な表情で一気に集中力をため込み、スタートと同時に顔の表情をリラックスさせる。「どんな舞台でも平常心。そこが彼女の特長」と中村監督。力みとは無縁な19歳のさわやかスマイルで“ハードルの明日香”を世界にアピールする。

 ファンだった楽天田中がタレントもりちえみとの無断外泊疑惑が報じられたが、揺れることはなかった。「変な意味じゃなく、私は応援している立場。野球も恋愛も両方頑張ってほしい」と苦笑い。陸上が恋人だ。今の寺田の心はベルリンにしか向いていない。

 技術的な修正点は見えている。「空中動作をできる限り短くしたい。本番までに可能な限り走る速さを上げて克服したい」。金沢イボンヌが持つ13秒00の日本記録は、もう目の前にある。「コンディションが整えば世界選手権で12秒台で走れる」。寺田が同僚福島に続く短距離界のニューヒロインへと駆け上がる。【永野高輔】