<テニス:全仏オープン>◇3日目◇25日◇パリ・ローランギャロス◇女子シングルス1回戦など

 世界72位のクルム伊達公子(39=エステティックTBC)が、現役復帰後初の4大大会勝利を金星で飾った。09年準優勝で同9位のディナラ・サフィナ(24=ロシア)に、2時間34分の末、3-6、6-4、7-5で逆転勝ち。4大大会勝利は、96年ウィンブルドン以来14年ぶりだ。39歳7カ月は、68年オープン化(プロ解禁)以来、全仏女子では2番目に年長での勝利となった。森田あゆみ(20)は初戦で敗れた。

 クルム伊達が、ラケットを握った両手を何度も突き上げた。夢に見た復帰後の4大大会初勝利。足にけいれんを起こしながら、“アラフォー”の星が、15歳も年下の前年準優勝者を撃破した。「信じられない。今は珍しく冷静になれていない」。勝負が決まると、真っ先に観客席の夫ミハエル・クルムに駆け寄った。目には涙が光っていた。

 96年の全盛期と少しも変わっていない気迫での勝利だ。5月に入って痛めた右ふくらはぎにはテーピング。最終セットにはけいれんも襲った。1-4とリードされたが「その中で、いろんなことをやって、最後に望みをつないだ」と、4ゲームを連取。最後は、サフィナが力尽きた。

 けがで、ほとんど練習ができていなかった。加えて、サフィナは強打で知られるトップ10選手。「今の状況を受け入れる覚悟で戦った」。第1セットは0-5スタートで、3-6で落とした。しかし、徐々にエンジンがかかると、得意のライジング打法がさく裂。サフィナの17本のダブルフォールトにも助けられたが「勝ちは勝ち」と、素直に喜んだ。

 08年に約12年のブランクから、不死鳥のようによみがえった。全日本制覇、ツアー優勝など、まるで以前の“伊達公子”をなぞったように、活躍が続いた。しかし、4大大会だけは復帰後5大会に挑戦し、本戦の勝利がなかった。年々、体も悲鳴を上げた。しかし、そのうっぷんを晴らすかのように、今大会最初の金星で、初勝利を祝った。

 この日のコートは、95年全仏で初めてベスト4進出を決めた思い出の場所だ。「ここに立てるだけで幸せだった。けがも自分に与えられたチャレンジ(だと思った)」。10年に40歳の誕生日を迎えるクルム伊達は、15年前の思いをしっかりとかみしめた。

 全仏女子シングルスでは、85年バージニア・ウェード(英国)の39歳10カ月に次ぐ年長勝利だ。当時、ウェードは2回戦で敗れている。クルム伊達の2回戦の相手はノーシードのグロス。大会史上最年長での3回戦進出は目の前だ。