<大相撲名古屋場所>◇6日目◇12日◇愛知県体育館

 東前頭3枚目の千代大龍(24=九重)の勢いが止まらない。東前頭5枚目の勢(26)を立ち合いから圧倒し、5勝1敗。今日7日目は36連勝中の横綱白鵬(28)と対戦する。結びの一番での金星を宣言し、三賞と三役を同時につかむ構えだ。

 浴衣に着替えた千代大龍が不敵な笑みを浮かべた。「結びでの白鵬関との一番。本当に楽しみ。横綱は連勝記録がかかっているんですよね。ぶっつぶします」。大口をたたけるのが、状態の良い証し。有言実行へ自身を奮い立たせた。

 5日目には綱とりを目指す稀勢の里に引導を渡し、この日も勢を電車道で押し出した。「かち上げ一発でいけましたね。土俵際まで手も出て足も出た」と相撲内容にも満足した。この日の朝に10万円の小遣いをくれた九重親方(元横綱千代の富士)からは「馬力相撲。いつもと違うね。子供もできて、今のところいい方向に向かっている。少しでも横綱をいじめるように頑張れ」と指令が出た。

 入門当初から出世欲はまったくなかった。だが、今年に入って意識が変わった。「僕には夢があるんですよ。第2の大龍っていったら大げさですけれど。指導者になって強い力士を育てたいんです」。師匠や、佐ノ山親方(元大関千代大海)、母校日体大の斉藤監督など指導者への感謝の気持ちも強い。「親方になるには横綱、大関にならないと、周りから認めてもらえないかなと。言葉に説得力も出る。協会以外から強者を送り込むのも格好いい。いずれにしても早く、三役、大関にならないと」と野望は大きい。

 1横綱2大関を破って臨んだ春場所の白鵬戦は、突き落としで敗れ負傷。「ケガは自分が悪い」と話すが、連勝記録を伸ばす白鵬撃破は名古屋場所の目標の1つだった。「まわしを取られた時点でゲームオーバー。一定の距離を保たないと。勝ったら大騒ぎになるでしょ。新聞にもメーンで載せてください」。大きな決意を抱いた男が横綱に襲いかかる。【鎌田直秀】