藤浪の投球が良かったのか悪かったのか、正直判断はできない。2回を無安打無失点で最速は154キロ。一方で、課題の右打者への抜け球がなかったとはいえ、内角要求はほぼなし。1回は21球を要し、狙い通りに投げきった球は、左の王柏融を見逃し三振に仕留めたインサイドへの真っすぐだけだった。

藤浪本人は「もっと狙ったコースへ」と課題を挙げるかもしれないが、これが藤浪のスタイル。ならば、今の投球をいかに生かすかを考えた方がいい。「見逃しをとろう」「空振りをとろう」という理想は選手にとって必要で大事だが、それを求め過ぎない方がいいと感じる。

自分なら、そんな藤浪をどうリードするか。まずバットを振らさないことには勝負にならない。ストライクゾーンは9分割ではなく、4分割にして配球を考える。対右打者を例に挙げれば、これまでの投球から打者には「いつ内に抜け球がくるか分からない」という心理が働き、外への踏み込みは甘くなる。そこでアウトサイドは通常よりボール2個分、内に甘く構える。藤浪に「ピンポイントで『あそこ』に投げなければ」と思わせるのではなく「『あの辺』に投げて打ち取ろう」というイメージを持たせる。体はホームの真後ろに置き、ミットだけ少し外めに構えるのも1つの手。現役時代に対戦した経験から、直球も変化球もストライクゾーンで勝負できる力がある。だからこそ可能なリードで、140キロしか出ない投手には使えない。

藤浪は200イニングを投げるポテンシャルがある。首脳陣にはたとえ打たれても、たとえ黒星が先行しても、結果に左右されず、1年間ローテーションを託してもらいたい。そうすれば、今のファンを含めた周囲の“期待度が高すぎる”見方も、徐々に変わってくるはず。それが、理想を追い求めすぎている今の藤浪のメンタルにも、変化を及ぼしてくれるはずだ。(日刊スポーツ評論家)

2回を無失点に抑えた藤浪(左)に「ナイスピッチング」と笑顔で声を掛ける福留(撮影・上田博志)
2回を無失点に抑えた藤浪(左)に「ナイスピッチング」と笑顔で声を掛ける福留(撮影・上田博志)