日刊スポーツ評論家の権藤博氏が、古巣・中日が優勝争いに参加するには早急な戦力補強が必要との見解を示した。リーグ戦45試合を消化して16勝22敗7分けの5位。首位阪神との差は11ゲームと大きく開いている。25日から交流戦に突入するが、現状打開へトレードによる野手補強は不可避とした。

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中日は10年ぶりの優勝を目標にシーズンをスタートしたが、現状は「厳しい状況」と言わざるを得ません。首位阪神との差は数字的にも戦力的にも大きな差があり、これを埋めることは容易ではないでしょう。今後も目標を維持するのであれば、少なくともパンチ力のある野手の補強は必要です。

もともと守り勝つ野球をベースにしたチーム編成とはいえ、1試合の平均得点が2点台は厳しい数字です。チーム防御率が12球団唯一の2点台で頑張っていてもこれでは勝率は上がりません。

期待していた新外国人のガーバーは2軍で再調整中。仮に時間をかけて日本の野球への対応力が上向いたとしてもタイプとしてはチームが望むパワーヒッターではありません。入国管理の問題も含めて新たな外国人の獲得は現実的ではないでしょうから、残された選択肢は国内でのトレードとなります。

中日のファームには他球団に行けばすぐに活躍できる中堅、若手の投手が何人もいます。ここは「交換も辞さず」の姿勢でなんとしても戦力補強の実現を目指すことが必要です。

トレードで印象深いと言えば、近鉄投手コーチ時代のラルフ・ブライアントです。88年6月に4番デービスが不祥事により退団という事態が発生。古巣の中日2軍にいたブライアントを獲得しました。このシーズンは74試合で34本塁打。伝説となった「10・19」への原動力となり、89年は49本塁打でリーグ優勝。一時的な刺激策ではなく、チームの幹に成長したというまれな成功例ですが、トレードにはこんな可能性も秘めています。

首位を走る阪神は攻撃力に厚みが出たことに加えて、投手陣も充実しています。もとよりトレードには組織を活性化させ、埋もれている選手に活躍の場を与えるという効果と役割があります。もっと早く手を打っていても、とも思いますが、追撃の可能性を残したいのであればどういう形であれ戦力補強は不可避でしょう。(日刊スポーツ評論家)