阪神打線の積極性は良い面も悪い面もある。中盤まで好調だった巨人戸郷にも変わらないアプローチで5回まで無安打が続き、球数もわずか55球しか投げさせられなかった。だが得点圏に走者を置くと、相手バッテリーは積極性を警戒してボール先行になる。逆転した7回はマルテの二塁打を機に、ストライク先行だった戸郷のリズムが崩れた。

1死満塁での大山の同点適時二塁打は初球のスライダーが甘く入った。大山は第1打席から狙っていたようには見えない変化球でも振りに行って、タイミングが合っていなかったが、勝負どころで甘い球を捉えた。待っていない球にも手を出してしまうことは相手投手を楽にさせてしまうリスクもあるが、紙一重でいい結果が出ることもある。

対照的に巨人打線は、6連敗中もこの日は好投した西勇に2回以降は各打者が狙い球を外しても、しぶとくファウルで粘り、球数を投げさせた。チームとして攻略するという意識が高い。特に前カードのヤクルト戦、そして今カードという上位対決では100~120%の集中力を持って臨んでくる。

本来、阪神も積極性とチーム単位での攻略と使い分けができればいいが、ここまでは従来の戦い方を貫いている。それでも個の特徴が強い打線だが、戦略性を持った打者もいる。6回無死一塁で代打で出た糸井はフルカウントまでボール球には手を出さず、歩かせたくない状況をつくり、戸郷の失投を仕留めた。7回に決勝の三塁打を放った中野は追い込まれるまで大江の直球は捨て、フルカウントになって初めて打てるゾーンに来たスライダーを最後まで待ち抜いた。

この試合も含めて今カードは残り9試合。この3連戦はともに3連敗をしないことが重要だが、残り6試合になるとより繊細な戦いになる。お互いのバッテリーが打者の特徴をつかんでおり、その上で攻めてくる。終盤の緊迫した戦いになり、自分たちの形を貫くのか、相手に合わせて形を変えるのか。優勝の行方のカギを握ってくる。(日刊スポーツ評論家)

阪神対巨人 先発し力投する巨人戸郷(撮影・前田充)
阪神対巨人 先発し力投する巨人戸郷(撮影・前田充)
阪神対巨人 7回裏阪神1死、右翼線に二塁打を放ちベンチに向かってポーズを決めるマルテ(撮影・前田充)
阪神対巨人 7回裏阪神1死、右翼線に二塁打を放ちベンチに向かってポーズを決めるマルテ(撮影・前田充)