藤浪はバロメーターの真っすぐがとても素晴らしかった。

2月のこの時期で159キロを出せるのは、腕が縦振りで指に掛かったボールが投げられているから。悪い時は横振りで抜け球も多いけど、縦振りでコントロールが安定して四球も0でしょ。1個与えた死球も変化球だからね。軸の右足にしっかり体重を乗せてから、踏み出した時にスムーズに左足に体重移動でき、良いフォームで投げていた。

相手が2軍中心打線だから抑えて当たり前とか、結果を見る時期ではない。いかにいい形で投げられるかが大事で、初回のバント攻撃にも動じず、マウンドでも落ち着いていた。課題はこれを続けられるかだ。この日は3回限定で飛ばせただろうけど、イニングを伸ばしていった時にどうか。近年は今年こそ、と言われてプロ10年目。本人は今年ダメならやめるぐらいの気持ちでやっていると思う。快投を続けて、開幕ローテを勝ち取ってもらいたい。

心配なのは中継ぎ陣だ。この日も馬場や小野がストライクを取りにいく投球で痛打されていた。小川は何とか2回を無失点に抑えたけど、5日の紅白戦は2回4失点と崩れたり、8日の日本ハム戦も浜地や村上、湯浅らがピリッとしなかった。ただでさえ、絶対的守護神のスアレスが抜けて方程式が不安定。まして今年は延長が12回まであり、昨年より3イニング延びる分、救援陣の頭数も必要になる。育成左腕の渡辺は面白そうだけど、もっと若手が出てこないと苦しくなる。

相手チームの話になるが、固定観念にとらわれない新庄監督のチャレンジは面白い。試合が2軍中心メンバーだったように、1、2軍の壁を取り払って選手をその気にさせている。3連続バントとか、走者なしでも外野に飛んだら全部タッチアップ送球の練習をさせるとか、考えさせながら実戦を最高の教材にしている。新しい、ものすごい戦力が出てくるかもしれない。(日刊スポーツ評論家)

日本ハム対阪神 3回を投げ終え阪神坂本(右)と言葉を交わしながらベンチへ戻る藤浪(撮影・前田充)
日本ハム対阪神 3回を投げ終え阪神坂本(右)と言葉を交わしながらベンチへ戻る藤浪(撮影・前田充)