阪神生え抜きの最多試合出場(2010試合)を目前にする鳥谷敬内野手。連続試合出場は現在1928。その鉄人の素顔は-。

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 広島田中広輔が「どんな感じなんですか?」と心配顔になった。13日のマツダスタジアム。室内練習場から一塁側ロッカールームまで薄暗い通路を歩いていた時のことだ。球界屈指のリードオフマンも気にかけていたのは、阪神鳥谷敬の今後について、だった。

 「トリさんの記録は本当にすごいと思うんです。ほとんどショートで出続けてきたわけですからね。ショートは常に動き続けないといけない。そんなポジションで、ケガもある中でグラウンドに立たせてもらえるだけの結果を残し続けることがどれだけ難しいか、僕も少しは分かるので」

横っ飛びで好捕する遊撃手時代の鳥谷敬(2011年10月24日撮影)
横っ飛びで好捕する遊撃手時代の鳥谷敬(2011年10月24日撮影)

 田中は今、鳥谷の背中を追っている。現在460試合連続フルイニング出場中。鳥谷が持つ遊撃手プロ野球記録、667試合連続フルイニング出場を視界にとらえ始めている。4月下旬には右手首に死球を受け、「正直まだ痛い」と苦笑いする状態でも出場を継続。「トリさんの記録を抜いたら、もう(フルイニング出場が)止まってもいいかな、と思っていますね」。そこまで尊敬する存在だから、どうしても“先人”の胸中が気になるのだろう。

 鳥谷がレギュラーの座を失って、もうだいぶ時間がたった。本来の打棒を取り戻せないまま、途中出場が目立つ状況。モチベーションは保てているのだろうか-。そう心配する声も少なからず聞こえてくるが、本人は至って冷静に現実を受け止めている。「自分には『特異性』がない。人より特別多く1発を打てるわけでもない。毎日試合に出られなくなったら難しい状況になる、ということは最初から想像できていたから」。現状を打破するには、与えられた出番で結果を積み重ねるしかない。誰よりも本人が一番理解している。

適時二塁打を放つ鳥谷敬(2018年5月6日撮影)
適時二塁打を放つ鳥谷敬(2018年5月6日撮影)

 「ベンチスタートの時は少しでも体が固まりそうだったら、攻撃中にバットを振ったり走りに行ったり。まだ正解は分からないけど、いつ出番をもらってもいいように、準備だけはしておきたいからね」。現在、打率は1割4分5厘。ひと振りに勝負を懸ける難しさを痛感しながら、試行錯誤の日々が続いている。

 1928試合連続出場中。あと3試合で球団生え抜き選手最多となる藤田平の通算2010試合出場にも並ぶ。ただ、個人記録を問うた時の返答は今も昔も素っ気ない。甲子園のナイターゲーム前は午前中から1人黙々とランニングを始め…。今も10年前と変わらぬ妥協なき練習を続ける理由は「記録」にはないように映る。後悔だけはしたくないから-。置かれた立場が変わろうと、鳥谷のスタイルは何も変わっていない。【阪神担当 佐井陽介】