日本ハム栗山英樹監督(57)が、泣いた。昨年のクリスマスイブの前夜、自宅のある北海道栗山町で行われた商店街のイベントに参加した時だった。普段から交流のある地域の方々が手作りで準備した、心温まるひととき。リラックスした笑顔であふれていたのに、昨季の戦いを編集した映像を見る瞳から、突然、静かに涙がこぼれ落ちた。

視線の先にあったのは、笑顔で抱き合うレアードと栗山監督の姿を捉えた1枚の写真だった。「あれだけ僕に文句を言った選手はいない」。退団が決まった助っ人と過ごした、濃密な4年間。17年のことだ。一塁まで全力疾走しない姿に「他の選手に示しがつかない」と試合途中でベンチに下げたことがあった。レアードは激怒。一触即発の雰囲気になったが、翌日の試合前、監督室に謝罪へ来た。しかも、ワインボトルを片手に。「このワインは高いんだ。一緒に飲もうと思って」と、にっこり笑ったレアードとの約束を果たせないまま、監督室にはワインだけが残された。

栗山監督は、言う。

「個人的な悲しさ、寂しさ、つらさとかよりも、レアードの野球人生にとって何が一番大切なのかというのを考えながら、進んでいかないといけない。大好きだったけど、いろいろな判断をしていかないといけない。僕にとっては一生、忘れられない外国人選手」。

例年になくオフの補強が活発だった日本ハム。非情に映るかもしれないが、監督も球団も、それを承知で勝つためにチームを再編しなければ、進歩がないことを知っている。「あいつのことだから、また戻って来るかもしれないしね。今度会ったら、いろいろと話しをしたい」。思い出のワインで乾杯する日は、来るのだろうか。辛い判断を迫られた指揮官の悲しみ、けれど立ち止まってはいられないと気丈に振る舞う姿が、胸にしみた夜だった。【日本ハム担当=中島宙恵】