第94回選抜高校野球大会(3月18日開幕、甲子園)の出場校が28日に発表される。“春”を待つ21世紀枠(3校)の候補校を紹介する。第2回は、元プロ野球選手の有倉雅史監督(54)が率いる北海道・札幌国際情報。

元日本ハム投手の札幌国際情報・有倉監督
元日本ハム投手の札幌国際情報・有倉監督

天国へ旅立った友のひと言が、高校野球の指導者に転身する大きなきっかけだった。札幌国際情報の有倉監督は、89年ドラフト6位で日本ハム入りした投手。ダイエー、阪神と3球団で9年間プレーし、8勝を挙げた。

現役引退後の99年に一般企業に就職。この年、闘病中だった北海高時代の同期で友人の元小結・大翔鳳関を見舞いに行ったことが転機だった。「(大翔鳳関に)『お前はプロでやって教職も持っている。その経験を指導者になって還元していくべきなんじゃないのか』と。その言葉は私にとって、大きかった」。同年12月、友は膵臓(すいぞう)がんのため32歳の若さで旅立った。

元小結の大翔鳳。99年、膵臓(すいぞう)がんのため32歳で亡くなった
元小結の大翔鳳。99年、膵臓(すいぞう)がんのため32歳で亡くなった

翌00年に一念発起し、特別選考枠教員採用試験に合格。01年の初任高・帯広三条では、日本学生野球協会の規定で2年間サッカー部顧問を務めた。「専門外の競技。しっかり勉強しないと説得力がない」と一から学び、海外サッカーの映像も見て研究した。03年から野球部副部長を務め、05年春に札幌国際情報に転任。7月に監督に就いた。

周囲の期待の半面、当初はなかなか結果が出なかった。就任直前の05年夏に南北海道大会8強だった同校だが、以降は15年まで10年間、夏の地区予選を突破できなかった。保護者から「負けてばかりでどうなっているんだ」と問い詰められることもあった。「こちらがいかに真剣に向き合っているかを示さないと信用は生まれない。帯広三条でサッカーを教えていたときも同じ。常に勉強。その思いは変えずにやってきた」。実直に信頼を積み重ね、16年に就任後初の南北海道大会進出。19、20年夏に準優勝と、道内公立校屈指の強豪になった。

昨秋北海道大会は2戦連続1イニング2桁得点の大会記録をマーク。この間、1番を打つ高根稜真主将(2年)は、13打席連続出塁の打率10割と打線をけん引。だが指揮官は「あれだけ点を取れるのは相手にミスもあるから。そういうことよりうちは、いろんなことを徹底し束になって戦えるか」。守備から入り、常に状況を考え先を読む。その教えがブレることは、ない。

同監督は89年ドラフト5位で阪神に入団した日本ハム新庄BIGBOSSと同期。98年には1年間チームメートだった。「野球界のために頑張っているのは、すごく伝わってくる。向こうはスーパースター。プロと高校野球と立場は違うが、私もこういう環境に立たせてもらっている。少しでも役に立てたら」。BIGBOSSだけじゃない。北海道の風を、聖地にも吹かせる。その日を心待ちにしながら、熱血指導を続ける。【永野高輔】