知将のムード漂う野村克也氏と自由奔放な新庄剛志氏。まるでイメージの違う2人の“コラボレーション”を目の前にしたのは22年も前、99年のことです。

99年、阪神監督に就任した野村克也(左)は新庄剛志に投手転向を勧める
99年、阪神監督に就任した野村克也(左)は新庄剛志に投手転向を勧める

故野村克也さんをしのぶ会が11日、神宮球場で行われました。このオフ、日本ハムの新監督に就任したビッグボス新庄氏も出席。その姿に、昔のことを思い出しました。

野村氏が阪神監督になった99年。開幕前最大の話題は新庄氏の「二刀流挑戦」でした。のちに「投手心理を理解させるため」などと意図を説明した野村氏でしたが当時は真剣に投手をやらせる…という姿勢を崩しませんでした。

同年の安芸キャンプでは投球練習も行い、3月に熊本で行われた巨人とのオープン戦などでも投げたものです。そんな「二刀流挑戦」の中で、なぜか記憶に残る出来事があります。こんな話でした。

99年3月5日、巨人とのオープン戦に登板した阪神新庄剛志は3者凡退に抑える
99年3月5日、巨人とのオープン戦に登板した阪神新庄剛志は3者凡退に抑える

新庄氏が投球練習を兼ね、キャンプ中にフリー打撃の打撃投手に登板したときのこと。気持ちよく投げているように見えた新庄氏でしたが、終えた後にこんなことを言いました。

「なんだかネットが気になっちゃって。肩がこりました」

打撃投手が投げる場合、ピッチャー返しになる打球をよけるためマウンドのすぐ先に打者から見て、左上の部分(右投手の場合)がカットされた形状のネットを置くことが多いもの。このときもそうで、新庄氏が「気になった」と言ったのはこのネットでした。

確かにそれまで経験のない状況での投球だけに違和感を持ったのでしょう。そして。取材中に記者からその言葉を伝え聞いたとき、野村氏が苦笑しながら言ったことが面白かった。

「ネットが気になるって。どけたらエエやないか。気にならん場所にずらすとか、なんとでもできるやろ。若いコは意外にそういう柔軟さがないんやなあ…」

打撃投手はこう…と決め込むのがよくない。人に迷惑がかかるのはダメだがなるべく自分がやりやすいようにやればいい。記者にボヤき、紙面を通じて新庄氏に伝えようとした発想でしたが、よく考えれば、ある意味で我々の生活にも通じる話ではないでしょうか。

何ものにもとらわれない新庄氏。“天然もの”だとは思いますが、ひょっとしてそんな「ノムラの教え」も生きているのかもしれません。

その薫陶を受けた監督たちの行方はやっぱり気になるところです。新庄氏は当然、阪神矢野燿大監督の4年目もやっぱり注目したい。それぞれが受け継いでいるはずの野村氏のDNAを生かしてほしいと思います。【編集委員・高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)

「野村克也をしのぶ会」に参列し、献花台に花を投げる日本ハム新庄監督
「野村克也をしのぶ会」に参列し、献花台に花を投げる日本ハム新庄監督