マウンドとアルプス。場所は違っても、「加田兄弟」はともに戦っていた。

 明石商(西兵庫)の加田悠真内野手(3年)と加田悠人捕手(3年)は双子の兄弟。甲子園を目指し、地元の淡路島を出て、ともに明石商に入学した。野球を本格的に始めた小学3年時、弟の悠真は一塁手で、兄の悠人は遊撃手だった。しかし小学5年時に悠真が投手を始めると、「悠真の速い球を受けられる捕手がいない」と兄が捕手を務めることになった。「最初はいやいやでした」と悠人は振り返る。

 明石商に誘ったのも、弟の悠真から。洗濯や風呂掃除など慣れない下宿生活。悠人が洗濯物をそのままにして、悠真が見つけて怒るなど、けんかもしょっちゅうだった。それでもやはり長年ともにプレーしてきた兄弟。悠人は悠真の球を受ければ、すぐに調子の善しあしが分かる。練習中も悠真の球を受けては「球が良くなった」など、状態を誰よりも把握していた。

 この夏、悠真は背番号「3」を付けた。悠人は昨秋にベンチ入りしたが、最後の夏はベンチ外。この日先発した悠真に、悠人はアルプスから声援を送った。悠真は打ち込まれて1回1/3で4安打4失点。チームも接戦の末、1回戦敗退となった。

 弟は一緒に甲子園を目指してくれた兄に感謝する。「大会前に球を受けてくれた悠人には感謝したいです。新たな舞台で2人で活躍できるように頑張りたい」。進む道は違ったとしても、2人の挑戦はまだまだ続いていく。【磯綾乃】