一時は同点とするルーキー佐藤輝明の20号2ランにはしびれた。どれだけ三振しても、めげずにスイングする。

心の中は分からないけれど見た目で言えば「それがどうした」という表情もいい。若さゆえの怖いもの知らずと言えばそれまでかもしれないが、やはり、ただモノではない。よくぞこんな男が阪神に入ったと、また思ってしまう。

しかしチームがそれを生かせない。少し気になったので調べてみた。これで18試合、10勝8敗だ。勝率5割5分6厘である。スコアブックを振り返り、記録担当にもチェックしてもらった。「佐藤輝が本塁打した試合でのチームの勝敗、勝率」である。

佐藤輝が本塁打した試合はこの日のヤクルト戦で18試合目。マルチ本塁打をマークしたのは5月28日西武戦(メットライフ)で3本塁打した試合のみ。18試合で20本を放ち、打ったゲームは10勝8敗だ。

ここまで阪神はシーズン全体の勝率が6割を超えている。それより少しだけ低い計算だ。これは佐藤輝に対して、適切な表現かどうかは分からないが、なんだか申し訳ない気はする。

負けた試合で放った本塁打をスポーツ紙では「空砲」と表現する。それでいけば佐藤輝は空砲が多いことになる。特に最近がよくない。これで“4発連続空砲”だ。6月以降で言えば同3日のオリックス戦(甲子園)からこの日まで放った7本のうち、実に6試合で空砲となっている。

シーズン序盤は佐藤輝が打てば勝つムードがあったはず。これもチームの失速ぶりを示す1つの事例かもしれない。新人の本塁打とチームの勝敗に関係があるかどうかは分からないが、やはり佐藤輝が打った試合は勝ちたいだろう。

佐藤輝、中野拓夢と2人の「新人」と外国人選手が目立つ異例のチーム構成である。この顔ぶれでここまで首位を走っているのだから面白いのだが、大事なのはここからだ。

「1本打ったけど、その他がっていう、そこの成長がどうしても必要なところ」。指揮官・矢野燿大は佐藤輝に対し、そう評したようだ。それは間違いないのだが、何というか、前からチームにいる大山悠輔辺りにもっと元気がほしいとやっぱり感じる。ルーキーばかりが目立っていては既存の選手は悔しいはず。チーム全体が「新人に負けるか」という気概を持って、戦ってほしい。(敬称略)

ヤクルト対阪神 4回表阪神無死一塁、右越えに2点本塁打を放ちZポーズを決める佐藤輝(撮影・上田博志)
ヤクルト対阪神 4回表阪神無死一塁、右越えに2点本塁打を放ちZポーズを決める佐藤輝(撮影・上田博志)