勝負に出たのか。スタメンを見て、大山悠輔を11試合ぶりに4番に戻した指揮官・矢野燿大の胸中を想像した。背中を痛めて離脱していた時期を除けばずっと4番に座っていた大山だがDeNAに今季初のカード3連敗を喫した6月27日を最後に降格となっていた。

それをこの局面で4番に戻した。なぜか。「やっぱりあの打順が一番いいな、と…」などと矢野は話した。その部分をもう少し細かく説明したのがヘッドコーチの井上一樹である。

「悠輔を4番でいくという基本ラインがあって。(序盤に)いい感じで回ってた頃の基本形に戻るのがベストだ、と」。序盤にチームとして機能していた好調時のスタイル、打順に戻したかったということだ。

その意味は分かる。矢野自身が「天が味方してくれて…」と振り返った前日は雨天コールドで勝利。ゲーム差は「3・5」に開いた。連勝なら4・5ゲーム差となり、一騎打ちの相手には違いないものの、しばらくは巨人の足音におびえる必要はなくなる。

巨人にしても6月18日時点で8ゲーム差あったものを一気に詰めてきての直接対決で連敗し、差が開けば少しはガックリくるところだった。少なくとも球宴、五輪ブレーク前までは、この順位のままか。多くの人がそう思う結果になっていたかもしれない。

そんな大事な試合で悩める男が4番に戻った。ここで結果を出し、チームも勝てば、一気に波に乗れたはず。それは優勝の行方そのものにも大きく影響したかもしれない。そんな決断だったはずだ。

だが先発・伊藤将司の乱調で序盤から大勢が決まり、打順どうこうという試合ではなくなった。そんな中でも主砲にはチャンスで巡る。この日、4度あった大山の打席はすべて走者がいた。結果は4打数で単打が1本。6回の無死一塁では三ゴロ併殺打に倒れた。

大山は非凡な打者だろう。しかし今季は4番でうまく結果が出ない。打順別打率は4番が2割5分7厘、5番、6番が1割台、そして7番が4割5分5厘だ。もちろん分母の試合数、打席数が違うので参考にはならないが「重圧の少ない打順がいいのかも」と思わせてしまう部分はある。

11日も4番だろう。結果が出れば最高だ。だが降格前のような姿なら再び「Bプラン」を考えざるを得ない。1試合の結果という以上に重要な第3戦だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)