圧倒的な高橋遥人の投球を見ながら、もう1つ、注目していたのは中日・高橋宏斗の三振数だった。6回に高寺望夢に1発を食らったものの懸命に粘っていた宏斗は8回2死まで阪神打線から実に15三振を奪っていたのである。
もう1個で今季、才木浩人もマークしたセ・リーグのタイ記録「16奪三振」に並ぶ。8回2死一、二塁の場面。そこまで3三振の大山悠輔との対戦はどうなるかと思っていたが、結果は二飛。「16」に並ぶことはなかった。敵ながら見事な投球だったと思う。
その力投に触れ、思うのは今季、遥人が投げてきた試合についてだ。3試合連続完封で今季4完封目という、継投、分業制が当たり前になったこの時代にあって途方もない結果なのだが遥人が投げた試合では相手も頑張っている。相手の先発投手と結果はざっとこんな感じだ。
3月28日 巨人ハワード ○2-0
4月5日 広島・栗林良吏 ●1-2(遥人は勝ち負けなし)
同月12日 中日・高橋宏 ○3-0
同月29日 ヤクルト山野太一 ○2-0
そして、この日が再び宏斗を相手に阪神は2-0で勝利を収めたのである。
人によって、さまざまな考え方、理論はあるだろうが、過去の取材でよく聞いたのは「いい投手ほど接戦で力を発揮できる」という見方だ。その見地に立てば遥人が相手にしているのはすべて好投手で試合も接戦の展開だ。すぐに戦列を離れたけれどハワードも昨季、楽天で好成績を収めている投手である。
「素晴らしい投げ合いでしたね」。指揮官・藤川球児もそう振り返った。そんな展開で勝ちきるのが遥人のすさまじさなのだろう。こんな投手が阪神にいて、よかったということだ。
そして遥人はここまで投げた5試合はすべてビジターゲーム。広い甲子園で失点しないのは分かるが、東京ドームやホームラン・ウイングのできたバンテリンドーム、乱打戦になりがちな神宮でこれはさらに立派と言えるだろう。
この勝利で阪神は9連戦を5勝4敗と貯金「1」で終えた。首位争いを続けるヤクルトも同じく貯金「1」。しばらくこの流れは続くのか。ローテがこのままでいけば来週13日には再び神宮で遥人と、進境著しいヤクルト山野の投げ合いになるかもしれない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




