「さちとらバッテリー」の愛称が、懐かしい。オリックス、日本ハム時代の伏見寅威は、14年ドラフト1位左腕の山崎福也をローテーション投手に押し上げた。オリックス時代は宮城とも名コンビで、22年までに宮城が挙げた25勝中22勝が伏見との先発バッテリーによるものだった。新天地・阪神では、高橋遥人との相性のよさが際立つ。6日までの高橋の全4勝は、伏見とのバッテリーによるものだ。

高橋が2勝目を挙げた4月15日中日戦(バンテリンドーム)後の、女房役のコメントが気になった。高橋について「いろんなことができる投手」と評していた。3日後、甲子園で伏見に言葉の意味を聞いた。

伏見 バリエーションですね、攻め方がいろいろあるっていう。

打者に対して、どれだけの手数を持っているか、ということなのか? と重ねて聞くと、うなずいた。

伏見 いいピッチャーの条件は、それですよ。“いろんなことができる”。たとえば、決め球がスライダーしかないピッチャーとか、カウント球がこれしかないとか、そういうのじゃなくて。もう何でもできる。このカウントで何を投げてもいけるし。

状況に縛られない。どのカウントでも、いろんな球種を操って、打者を抑えに行ける。相手に狙いを絞らせない。そんな高橋の才能を伝える言葉だった。

左肩、左肘、左手首などの手術を乗り越え、高橋は自身の投球について「もっとよくなる」と言い続ける。手術の執刀医、リハビリを支えてくれた球団関係者らが、より高いレベルを求め、高橋のためにと力をつくしてくれた。その思いになんとしても報いたい。妥協はしない…と心のうちを語るような球を、思いを、ミットで受け止めているのが伏見なのだ。

伏見 まだまだ伸び代あると思ってますし。もっともっといい高橋遙人を作り上げたい、っていうのはあれですけど。一緒に……もっともっといい投手になれるような手助けはしたいと思ってます。

極上の才能を引き出していく。高橋がなりたい高橋遥人になれるよう、リードしていく。「自分の言葉に責任を持ちたい」。それが伏見の信条。「はるとら」の挑戦が続いていく。【堀まどか】

中日対阪神 完封勝利し伏見寅威(左)とタッチを交わす阪神高橋遥人(撮影・森本幸一)
中日対阪神 完封勝利し伏見寅威(左)とタッチを交わす阪神高橋遥人(撮影・森本幸一)