昼はセンバツ、夜はナイター。野球好き至福のときもあと1日となった。センバツ準決勝の「東西対決」は大阪桐蔭が貫禄勝ち。昨年11月にあのイチローから指導されたこともあって快進撃を続けてきた国学院久我山は初の決勝進出を逃した。夏にまた頑張って…というところである。

ナイターでは阪神が開幕5連敗。虎党はどんよりしているはず。そこでレジェンド・イチローをオリックス時代、連日取材したころの思い出話を「連敗脱出のカギ」として書きたい。

結論から言えば、阪神が勝つ形はこの試合の9回に出た。近本光司が安打で出て、主軸がかえす。これで得点していけば流れは必ず阪神に来るのだ。

もちろんブルペン陣の問題などもあるし、それだけが勝利のポイントではない。それでもその形ができれば勝ちに近づけるし、できなければ苦しいのだ。

問題なのはキーマンである近本がいわゆるスロースターターで春先は調子がよくないということだ。昨季はそれを糸原健斗がカバーして打ちまくったので目立たなかったが、今季はここまでそういう存在はおらず、難しい状況が続いているのは承知の通りだ。

しかし、この日。9回に近本が安打を放ったことで流れは少しだけ変わったと見る。ここまでの5試合、近本が最終打席で安打をマークしたのはこれが初めて。これには結構な意味があると思う。

イチローの話だ。以前にも書いたがイチローは「最終打席の安打」にこだわった。そこにはプロとしての冷静な分析がある。

「そこまで3打数無安打とか4の0とかで。試合も一方的に負けているとかの展開でね。そんな試合は最後の打席が大事。そこで打てれば次の試合につながるからです。打率だってそれほど下がらない。だから最終打席こそ集中していかないとダメなんです」

そんなイチローの“教え”だった。高校生は一発勝負なので、あまり関係ないかもしれないがプロにとっては重要だ。そう思ってみているとこの試合、暗いムードの9回に近本がしっかり中前にはじき返し、この日、初安打。それが得点につながった。

7回以降に得点したのも開幕5戦でこれが初めて。無残な敗戦だが選手の気持ちは切れていない。たった5敗で切れては困るのだけれど。まずは31日・広島戦、近本の第1打席だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

広島対阪神 5回裏を終えベンチで矢野監督(右)と話し込む近本(撮影・加藤哉)
広島対阪神 5回裏を終えベンチで矢野監督(右)と話し込む近本(撮影・加藤哉)