前橋商(群馬)が「タッチ」のジンクスを打破して、高崎北に5回コールド勝ちした。

 同校は、漫画家あだち充氏をOBに持つ縁で、応援曲に同氏の名作テレビアニメ「タッチ」の主題歌を採用していた。ただし、選手の間では「タッチが流れると負ける」というジンクスがあった。10年にオリックス駿太外野手(22)を擁して出場した夏の甲子園。1回戦の宇和島東戦は同曲を演奏せずに勝利し、演奏した2回戦の北大津戦では3-9で敗れてしまった。この年を境に、同曲は応援から封印された。10年の応援に参加した当時吹奏楽部2年だった黒沢祐佳さん(21=会社員)は「ジンクスがあったので恐る恐る演奏したんです」と振り返る。

 野球部とあだち充氏の関係は根強く、チームバスやバッグ、応援用のうちわにも前橋商のユニホーム姿のキャラクターが描かれている。86年に同校が甲子園に出場した際には作中に前橋商が登場したこともあった。

 一念発起したのが、エースの田中椋投手(3年)だ。大会前に「自分の打席で『タッチ』を演奏してほしい」と吹奏楽部へ直訴した。先発した2回戦の明和県央戦では打席で同曲が流れ「『オオ~』となった。力が出た」と1安打を放ち、投げても8回を4安打2失点に抑えた。高崎北戦で先発した斎藤由斐投手(3年)の打席でも、同曲が響き渡り、コールド勝ちに突き進んだ。ジンクスを打ち破る2連勝。5年ぶりの夏の甲子園へ「タッチ」は勝利の調べに変わった。【松尾幸之介】