阪神担当の奥田隼人記者が6日、「虎番リポート」と題し、高知・安芸の秋季キャンプで北條史也内野手(25)に密着。1日の合計888スイングすべてをチェック。徹底した「右打ち」の真相、来季にかける思いに迫った。

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「合計なんぼですか?」

全ての練習を終え、スイング数を打ち込んだカウンターを北條に見せると「そんなに打った? 888。フィーバー」と笑った。仮に特打メニューもこなしていれば、1000スイングは超えていた計算になる。

この日は北條に密着し、すべてにスイングをチェックした。そのデータを分析すると、打球方向に明確な傾向が表れていた。打撃マシン・左投手・右投手を相手に113スイング。打球を3方向に振り分けると割合は右翼48・7%、中堅32・8%、左翼18・5%。8割超の打球が中堅から右方向だった。本人にその意図を聞くと「右に打たないと、打率が上がってこない」と返ってきた。今季は82試合に出場し、打率2割4分7厘。43本の安打のうち、中堅から右の安打は14本で引っ張った打球が多い。

「引っ張りの打球の方が多かったら、凡打になりやすい。右方向にヒットが出ている時は、調子が大体いい」

北條は右投げ右打ち。強く振ろうとすると、どうしても右手に力が入ってしまい、引っかけてゴロの凡打が多くなる。そこで今キャンプでは右打ちを徹底し、打撃の向上をもくろむ。打球を捉えるポイントを少し後ろに意識し、捉える瞬間までバットのヘッドを返すことを我慢。「前(フェアゾーン)に飛ぶ打球もファウルになって、またチャンスが増える。ファウルでもいいという感覚で」。元々、インコースへの対応は腰をうまく回せるために苦手ではない。外の球を確実にとらえることで打率アップにつながる。しかし、やみくもに右打ちだけを意識している訳ではない。「打撃投手の球を打つ時に、右方向を意識しすぎるとヘッドが下がる」。念頭に置きながらもコースに瞬時に対応している。

秋季キャンプに向け、矢野監督に提出した課題リポートには打撃練習と守備練習の割合を「8・2」に設定することを報告した。

「長打と打率を残せるように。そこを求めていきたい。僕はバッティングで打てなかったら、試合に出られないと思うので」どうすれば試合に出られるかを考え抜き、自主的に練習の割合を決めた。

すべてはグラウンドに立ち続けるためだ。レギュラーの座は手に届きそうで届かない。「(シーズンを)フルで出たことないので、僕は…。1回は、出てみたいじゃないですか」。勝負のプロ8年目へ-。強い決意を胸に、北條はバットを振っていた。【奥田隼人】

○…「2割」に配分する守備でも、北條は手を抜く考えはない。今季は12失策で悪送球が目立った。課題克服のために足の運びや打球への入り方などを反復練習している。各クールで最低1回は早出での特守を組み込む。「(送球の)いい感覚を覚えるため」と打撃投手もこなしている。久慈内野守備走塁コーチは「守備練習をやっている時はしっかり自分の課題をこなしている。メインは打撃だけど(自主性の中で)よくやっている」と評価した。

○…北條に矢野監督の期待も大きい。打撃について「ずっといい」と語っており、練習に取り組む姿勢も「誰が見てるとか関係なく、いつでも自分のやることをやりきれるというところで、チームでもトップにいる。うまくなりたい気持ちも強い」と評価する。中堅から右方向への打球を飛ばしていることも、指揮官は「そういうことができるのがジョー(北條)のプラス。作戦もやりやすい。あいつにはそういう幅がある」と目を細めていた。