球界野手で史上最長身となる2メートルのビッグルーキーの左手に、いつもより大きなグラブがはめられていた。

13日の巨人宮崎春季キャンプ。ドラフト5位の秋広優人内野手(18=二松学舎大付)がファーストミットを手に姿を見せた。ミットの感触を確かめようとした原辰徳監督(62)にいったん手渡した後、岡本和とキャッチボールを始めた。

本来は三塁手。12日の1軍合流初日は、4番サードを張る岡本和と三塁手同士として肩を作り合った。未来の大型三塁手として今キャンプは正三塁手の近くで練習させる-。周囲の固定概念は一夜にして覆った。

勝負師として、長所を最大限に生かすのが原監督の流儀でもある。持論は「常に今日より明日」。15年に「99%(捕手は)ない」と一塁にコンバートした阿部から捕手復帰を直訴されると快諾して19年シーズンに臨み、5年ぶりのリーグ制覇につなげた。今季は発表済みの組閣に、機が熟したとみるや桑田投手チーフコーチ補佐を急きょ加え、新しい刺激をもたらした。

勝負を制するためなら、過去の決断を変えることをいとわない。秋広の一塁挑戦にも当てはまる。紅白戦2試合の7打数5安打1盗塁を受け、1軍へ呼んだ。高校時代は投手兼一塁手。プロでは野手1本の方針だが三塁手に限定しなくてもいい。原監督は「一塁もそうだし、外野もやろうということになっているよ。いろんな可能性を持っていた方がね」と打力を生かせる最適の場所を柔軟に探っていく。

一塁挑戦は危機管理にもなる。メジャー通算196本塁打の強打者ジャスティン・スモーク内野手(34=ジャイアンツ)は新型コロナの影響により来日できていない。3月26日の開幕戦どころか、その後も不透明だ。来るべきコロナ禍のシーズンを戦う上で一塁手の層を厚くする必要がある。

指揮官の流儀はグラウンド外にも張り巡らされている。12日の全体練習は雨が降らない中でも雨予報のため室内に変更し、午前中で切り上げた。理由は疲労の考慮だけではなかった。「明日も雨らしい。シートを取ったり外したりして大変だから明日のためにそのままにしておこうと」。14日の紅白戦に向けて最善にするため、グラウンドキーパーの業務を必要以上に増やさない。先を見据えながらも相手を思いやる視点が、常に判断の下地にある。

14日の紅白戦では「6番・一塁」で起用する。2軍選手として出場した過去2試合と違い、1軍の投手と対戦させる。「ステージはどんどん上がるだろうけど、それを超えていかないといけないね」。まだ18歳。未来の「大型三塁手」という固定概念を排除し、無限の可能性をさらに膨らませていく。【浜本卓也】

▽巨人後藤野手チーフコーチ(秋広の一塁守備について)「いいと思うよ。目に見えるところは。基本はちゃんと伝えた上で試合に出てもらう。『外野はやったことがない』って言うから、徐々にゆっくりですね」