西武のプロ20年目、37歳の執念がバットに乗り移った。1点を追う8回2死一、二塁。栗山巧外野手がカウント1-1から低めのチェンジアップをとらえた。一塁手T-岡田のグラブをはじき、右前へ落ちる同点適時打。この回から、投手が山本からヒギンスに代わったことが、結果的に潮目となった。「打てる球を打つ、そういう意識でいました」。言葉通りの力強いライナー性の一打が、9回の逆転劇へ導いた。

糸口を探っていた。相手先発は勝利数、防御率でリーグトップを走る山本。4回先頭で、中堅フェンス直撃の二塁打を放っていた。「NO・1クラスと言っても過言ではない投手に、ああいう1本が出るのは僕にとっても自信になる。やっていることが間違ってないと励みになる1本」。今季9度目のマルチ安打で、通算2000安打へのマジックは「28」となった。

カウントアップと比例するように、周囲の期待は膨れ上がる。球団は記録達成に向けた「ONEROAD」プロジェクトを発足。特設サイトを開いた。スタンドにはいくつもの“クリメーター”が出没。「まだまだ遠いのに、そういうことをやってくれてうれしいなって気持ちと、1本ずつ減らしてあっという間に終わるようにと思ってます」。球団、ファンの期待をプレッシャーにすることなく、栗山らしく1本、1本、積み上げていく。

チームは京セラドーム大阪で今季初勝利。勝率を5割に戻した。「何とかかんとかでやっていきたいなと思ってます」と、焦らずじっくり、反転攻勢をけん引する。【栗田成芳】

西武辻監督(逆転勝利で勝率5割)「まだですね。また(貯金生活へ)チャレンジですね、あした」

 

西武高橋(8回4安打1失点で5試合ぶりの6勝目)「ホームランは打たれてしまいましたが、岡田さんのミットを目掛けて思いっきり投げていました。完投も若干意識しましたが、最後は信頼している平良に任せました!」