115球の熱投は報われなかった。阪神先発の西勇輝投手(30)が、無念の1失点完投負けで6敗目を喫した。今季の伝統の一戦で、3戦3勝同士で迎えた巨人高橋との“ホコタテ対決”で投げ負け。プロ通算100勝も後半戦へ持ち越された。

8回に1点を先制されたが9回も続投。2死後、丸の打球に遊撃の中野が飛びついた。仲間の好守備に、グラブを何度もたたいた。わずか4安打に抑えても、味方の援護もなくビハインドの展開。だが最後まで気持ちは切れていなかった。矢野監督は「もちろんいつも、気持ち込めて投げてくれている。さらに、というところはあったのは俺もすごく感じた」と右腕の気迫に9回完投を託した。

中8日で迎えたマウンド。テンポ良く次々に巨人打線を打ち取った。3回まで無安打の完璧な投球。変化球を丁寧に投げ分け、的を絞らせなかった。2回1死では、ウィーラーの高いバウンドを背走しながらつかむなど、持ち前のフィールディングも随所で光った。

均衡が破られたのは8回。先頭の亀井に右翼フェンス直撃の二塁打を浴び、1死三塁から大城に外のスライダーを捉えられ、左前適時打を許した。それでも中島を外のスライダーで三ゴロ併殺に仕留め、最少失点。矢野監督も「今年一番良かったんじゃないかな。そういうボールを投げて、結果もそれに伴って、リズムを作ってくれたり」とたたえた。1失点完投は今季初のベストピッチ。足りなかったのは白星だけだった。

6月18日巨人戦(甲子園)で100勝に王手をかけてから3試合足踏み。2日広島戦(マツダスタジアム)では1イニング7失点と苦しんだが、この日は光が見える黒星になった。本来の制球力がさえ、マウンドに堂々と立ち続ける姿。福原投手コーチも「しっかり最後まで、最後の9回3人で抑えてくれて、次につながる登板。いいピッチングだったのかなと思います」とたたえた。約1カ月の五輪ブレークを経て、後半戦最初の登板で節目の勝利をつかみたい。【磯綾乃】

▼阪神の1安打以下の敗戦は20年11月10日の巨人戦(甲子園)以来。巨人戦では通算18度目。甲子園で初めて巨人戦が開催された1936年(昭11)9月25日の対戦では、沢村栄治にプロ野球初のノーヒットノーランを許している。