貫禄たっぷりに、山賊打線を封じ込んだ。楽天岸孝之投手(36)が16日、西武24回戦(楽天生命パーク)に先発。

7回無失点で今季9勝目(9敗)を挙げ、15年目で3年ぶり9度目の2桁勝利に王手をかけた。散発3安打で三塁を踏ませず、3年ぶりの規定投球回にも到達した。17日西武戦に勝利か引き分け、4位ソフトバンクが敗戦した場合に、楽天の2年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)進出が決定する。

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ヒヤっとしたのは、最後だけだった。7回2死。岸が岡田を内角直球で詰まらせた。自身へ向かってきた打球に一瞬身構えたが、力はなかった。やや体勢をのめらせながら、青いグラブでがっちりとつかんだ。「ブルペンはすごく良くて、良すぎるのも怖かったので最初は慎重になりすぎた。体を動かすまでは寒かったですけど、投げ始めたら、そこまで寒さは感じず、普段通りやれました」。雨上がりの肌寒さもなんのその。7回を散発3安打無失点にまとめ、先発の役割を十分に果たした。

ギアを上げてきた。10月は3戦2勝。計20回で自責2、防御率0・90をマーク。「今年は1年間、肩肘に特別何も(不安は)ない。ここ最近は特にいい」と状態の良さを実感する。前半戦は4勝6敗、防御率3・65と黒星が先行も、東京五輪による中断期間も活用し、後半戦は5勝3敗、防御率2・77と右肩上がりに数字を残す。

西武時代から右腕を知る石井GM兼監督も、シーズン終盤でのベテランの頑張りに舌を巻く。

「大事な試合になればなるほど結果を求められる。そこで岸は自分の軸ができていたので、最高のコントロールとかを出せる。若い時から見ていますけど、試合前は緊張していますけどボールを持ったら、すっとそういうものを自分の力に変えられるところは頼もしいです」。

15年目を迎えても初心を忘れず、1戦1戦に全力を出し切る愚直な姿勢が、チーム全体にも好影響を与える。

この日で今季の投球回数は143回となり、3年ぶりの規定投球回数に届いた。「先発としてそれだけイニングを投げられている。久々なのでよかった」とかみしめながら「到達して喜ぶんじゃなくて、もっと上に行きたい」と貪欲さもかいま見せる。今季の登板予定は残り1試合。3年ぶりの2桁勝利へ、最初で最後のチャンスもがっちりとつかみとる。【桑原幹久】