勝利への欲求が、剛速球へと乗り移った。楽天則本昂大投手(30)が8回2失点の好投でチームトップの11勝目を挙げ、2年ぶりのCS進出へリーチをかけた。

5回降板の前回登板から立て直し、優勝争いを繰り広げるオリックス相手に118球の熱投。「とにかく勝ててよかった。ブルペンも登板過多になっているので、長いイニングを投げられてよかった」と8連戦最終戦でチームの連敗を3で止め、自身3戦ぶりの白星で締めた。

仲間たちの思いが、気持ちを高ぶらせた。前夜に優勝の可能性が完全消滅。一夜明け、グラウンドに立つチームメートの顔色をうかがうと「下を向いている選手は1人もいなかった」。一方で7敗目を喫した前夜先発の新人早川は、責任を感じているように見えた。「早川がすごく悔しそうだった。何とかやり返したかった」と心を燃やした。

だからこそ、しょぼくれてはいられなかった。1点リードの5回、9番伏見に痛恨の逆転2ランを浴び、天を仰いだ。悔しい。でも「粘り強く投げればチャンスは生まれる。うまく切り替えることができた」と前を向いた。6回には17年の球宴以来、レギュラーシーズンでは自己最速の158キロを計測。逆転後の7回2死一、三塁で伏見を三ゴロに打ち取り、「よっしゃ!」と感情を解き放った。

チームは残り4試合。試合のない21日に4位ソフトバンクが敗れると、CS進出が決まる。「残り試合を少しでも勝って、いい終わり方、締め方をしたい」。目の前の白星を、下克上への足がかりにする。【桑原幹久】