<広島5-13巨人>◇11日◇マツダスタジアム

 巨人が両リーグでクライマックスシリーズ(CS)進出一番乗りを決めた。広島に大勝し優勝マジックを12とした。この日の4発を含め9月に入って9戦21発。2年目の成長株、中井大介内野手(19)が7回にプロ1号を放ち、本塁打ショーを締めくくった。「オガ・ラミ・カメ」のクリーンアップは今季3度目の1発そろい踏み。阿部慎之助捕手(30)の連続試合本塁打は5でストップした。

 両脇を絞ったまま、中井が最短距離でスライダーをつぶしにいった。7回2死1塁、第4打席。広島小松が投じた3球目だった。ここまで、ストライクゾーンの球は全部フルスイングしていた。優勝が視界に入ったこんな時期に、スタメン起用された19歳。原監督から「失敗なんて気にするな。思い切っていけ」と送り出され、その言葉をひたむきに守っていた。

 純な気持ちで打った打球は、真っすぐ飛んでいった。「センターの頭を越してくれ、と思ったんですが。まさか入るとは」と初々しかった。プロ1号の2ランがバックスクリーンで跳ね、11-2。あっという間にダイヤモンドを回ると、先輩たちの笑顔が待っていた。巨人にまた、楽しみな若者が現れた。

 原監督から将来を嘱望されている右の強打者だ。ドラフト3巡目で入団した2年目。指揮官にとって「コイツはモノになる」と直感する出来事が、2月にあった。春季キャンプ中、同じ三塁手で右打ちの大田と練習をともにした。鳴り物入りで入団したドラフト1位には、いつも大きな人垣ができた。大きなホームランをいくら打っても、実戦で結果を残しても、ポツンとしていることが多かった。

 ある日の何げないやりとりに、指揮官は中井の資質を感じ取った。

 原監督

 おいっ!

 大田に負けるなよ。

 中井

 はい。絶対に負けません。

 大きな声で即答したという。当の本人は「緊張してますし覚えてないんです。でも大田に負ける気なんてないですね、当然」と言った。原監督は「『負けません』と答えることがほとんどなんだけど。本気で思ってないと『絶対に』とは言えない。この負けん気は、超一流になるか否かの境目で欠かせない能力だ」と、今でも鮮明に覚えている。

 出場機会を多く与えるチームの育成方針から、ファームでは主に遊撃を守った。岡崎2軍監督からの打診を、当初「なぜ大田がショートでないんですか」と猛烈に拒んでいる。試合後も「自分は自分。しっかりしていればいい」と浮かれることはない。一流のハートを折らず愚直に技術を磨き、最高の結果を出した。

 5回にも二塁打を放ち大量点の口火を切った。中井に刺激を受けた打線は、この日も4本塁打、13得点。9月9戦で21本塁打と、手が付けられない爆発ぶりでマジックを12とした。平成生まれの熱い男も輪に加わって、リーグ3連覇まで一気に駆ける。【宮下敬至】

 [2009年9月12日8時38分

 紙面から]ソーシャルブックマーク