<ソフトバンク1-12日本ハム>◇10日◇福岡ヤフードーム
日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)が球史を塗り替える、圧巻の奪三振ショーを見せた。ソフトバンク打線から降板した8回まで毎回、先発全員の12三振。史上初となる開幕戦から4試合連続2ケタ奪三振の8回4安打1失点で、今季2勝目を挙げた。最速149キロの直球主体に、新球ワンシームなどの変化球を交えて的を絞らせず「K」を量産。開幕戦で敗れた相手へ雪辱し、最下位低迷が続くチームへ反攻のエネルギーを注入した。
美学を貫いた先に、前人未到の世界が広がっていた。ダルビッシュが、幾多の大投手もなし得なかった金字塔を打ち立てた。開幕戦から4戦連続で、2ケタ奪三振。大役を任されるエースでしか挑戦権を与えられない快記録を達成しても、クールに受け流した。「僕は1週間に1回しか投げることができないので、確実に勝つことが大事」。使命を全力で遂げ、誇れる領域へとたどり着いた。
クレバーかつ大胆に、三振を積み上げていった。序盤は投球の基本である外角低めへ、直球、スライダー主体にして丁寧に集めた。打順が2巡目に入る中盤以降、モデルチェンジ。4回の先頭川崎、続く本多を、内角直球で連続の見逃し三振。右打者は低めへ沈むワンシームで丹念にひざ元を突き、空振りを誘った。三振の決め球は直球で5個、ワンシームで4個、スライダーで3個と自在だった。
戦略を全うした。3月20日開幕戦では13三振を奪いながら、ソフトバンクに9回5失点で完投負け。その試合で本格導入した新球ワンシームを軸にした単調なパターンのスキを突かれた。「前回の(対戦を)うまく利用して投げようと思っていた」。残像を生かし、バリエーションある配球で混乱させた。内外角、高低をいっぱいに使い、立体的に攻め切った。
完全無欠の6年目の躍動が始まった。昨季終盤は左臀部(でんぶ)痛などのコンディション不良に襲われ、苦悩の日々を過ごしている時にも、力をもらった。ちょうどそのころ、球団の野球アカデミーに所属する男子小学生と、札幌ドームの一室で対面した。その少年は突然の病に襲われ、野球を続けることができなくなった。ダルビッシュの大ファンで、闘病を励ましてほしいと依頼を受け、エールを送った。その少年は、力強く「頑張る」などと約束したという。
自分自身を見つめ直す出来事も、この日の力になった。「本当にいい選手でしたから…」。7日に巨人木村拓也コーチが37歳の若さで急逝。衝撃から一夜明けた8日、札幌から福岡入りした夜に個人ブログで悲痛な思いを明かした。同じプロ野球選手、そして家族を支える父。登板前夜の9日に同ブログで「野球ができるだけでうれしいし、投げられるだけで幸せ」と、したため、向かった決意のマウンドだった。
周囲から、野球へ注ぐエネルギーをもらって臨んだ今季を、フルスロットルで駆けている。その証しでもある、驚異の記録へと到達した。大勝へと誘った、会心の1日を素直な思いでシンプルに総括した。「こういう風にみんなで楽しく試合ができればいい」と笑みを浮かべた。開幕から暗い闇に入り込んだ、チームへとプレゼントした今季2勝目。木村コーチに野球少年、そして今をサポートしてくれるすべての人へ―。ダルビッシュが全身全霊でささげた、プロ野球選手である存在価値、幸せの形の偉業だった。【高山通史】
[2010年4月11日12時28分
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