<ソフトバンク3-4ロッテ>◇22日◇北九州

 鬼門の北九州で6連敗。逆転負けのソフトバンクに明るい材料もあった。4年目の牧原大成内野手(21)が2回にロッテ古谷からプロ初安打をマーク。松田、吉村の故障離脱で手薄になった三塁で後半戦は2試合連続で先発した。首位と1・5ゲーム差と激しいペナント争いの中、ポスト本多の呼び声もある成長株が日々勉強している。

 その1本で自分のあり方を描けた。2回1死二塁。牧原のプロ初安打は内野安打。古谷に少し詰まらされたゴロは二遊間へ転がった。二塁クルーズが逆シングル捕球から一塁へ送球も、俊足で一塁塁審からセーフの声を引き出した。

 「スタメン2試合で、みんなからも『打てよ』と言われていたし、絶対に打ってやろうと思っていました。素直にうれしいです」

 プロ通算14打席目、今季7打席目での一打。その内容に「自分の持ち味を出せました」と少し胸を張った。おまけに一、三塁とチャンスを広げ、中村の適時打を呼んだ。「2本目は出ませんでしたが、スイングの形は悪くなかったと思います」。2、3本と積み重ねていけるかは自分次第だが、大切な1球はそっとバッグにしまった。

 育成入団から2年目の12年6月に支配下登録され、4年目。売りにする俊足と堅実な守りに少しずつ打力をつけてきた。秋山監督も秋季キャンプでマンツーマンで指導。いすに座ってのティー打撃が目立った。「僕は体が小さいので前に出ながら打ちにいっていた。そうすると内角に球がくると窮屈になる。左肩が下がってしまう。それをその場で回るようにと。『肘をたたむと回るだろ』と言われました」。プロでは小さめの172センチでも今ではフリー打撃はヤフオクドーム右翼席へ放り込むパンチ力を備えてきた。

 伸びしろたっぷりの21歳だ。その一方で、ある日の試合前練習。打球から股間を守るファウルカップをつけず、鳥越内野守備走塁コーチから「準備ができていない」と雷を落とされた。21日の初戦では福浦の難しい回転のハーフライナーをトンネル。プロ初失策で一時逆転を許した。この日は8回にサブローの三塁線の打球をファウルゾーンに流れながら、さばく好守。「まだ作り上げている段階。まだ、甘いけど昨日よりは今日がいい」。鳥越コーチからお褒めの言葉はなくても、毎日の積み重ねは牧原にとって前進を意味していく。

 チームは逆転負けでも、松田と吉村の負傷離脱で手薄になったホットコーナーに明るい材料がいた。【押谷謙爾】<牧原大成(まきはら・たいせい)アラカルト>

 ◆生まれ

 1992年(平4)10月15日、福岡県。

 ◆球歴

 中3時に「久留米ボーイズ」でホークスカップ準V。城北(熊本)1年夏に同校が甲子園出場もメンバー漏れ。10年育成ドラフト5位で入団。

 ◆支配下

 50メートル走5秒8の俊足、好打を評価され12年6月11日に支配下登録。背番号は129から69。3日後に、代走で1軍デビュー。昨年ウエスタン・リーグ盗塁王(19個)。

 ◆海外で自信

 12年オフは台湾ウインターリーグで打率3割8分以上を残し「本塁打も打てた。守りでも二、遊、三塁と守って失策は0」。

 ◆ものまね

 昨オフの年末年始に帰省し、野球経験のない父昭彦さんから「中村晃選手の打撃をまねしてやってみろ」と助言され実践。実家には距離が短く170キロの超スピードボールを体感できる打撃マシンがある。

 ◆サイズ・タイプ

 172センチ、66キロ。右投げ左打ち。

 ◆年俸

 700万円(推定)。