<WBC日本代表合宿>◇第2日◇16日◇宮崎

 リリーフ戦線に“超新星”が現れた。WBC代表候補で最年少の今村猛投手(21)が、首脳陣からブルペン投球を絶賛された。東尾投手総合コーチのリクエストを受け、14球連続でシュートを披露。右打者の内角をエグる宝刀で高い評価を得た。守護神候補だった浅尾が右肩の張りで出遅れ、救援陣が再編される可能性がある状況。優しい顔の「けんか屋」が侍ジャパンを救う。

 直球のみ30球を投げ終えた直後。マウンドの今村に、東尾投手総合コーチから「シュートを見せてくれ!」との声が飛んだ。阿部から「そんな球投げんのか?」とイジられると、グラブで顔を隠してニヤリ。ほのぼのとした優しい表情のまま、「けんか屋」に変身する。

 山本監督、東尾コーチの視線を浴びながら、右打者の内角めがけて宝刀を投げ続けた。14球連続だ。それまでの直球は高めに上ずっていたというのに、シュートはズバズバと的に収まる。捕手役の阿部が思わず「いい曲がりだ」と声を上ずらせる。制球力、切れ味、曲がりともに十分。最後は東尾コーチから「すごい!

 もういいよ!

 もう十分!」と絶賛され、幕を下ろした。今村は「シュートのコントロールはできたけど、真っすぐが思い通りにいかなかった。調子が悪かった」と反省の弁を並べた。

 対照的に首脳陣の評価は抜群だ。山本監督が「いいボールを投げていたね」と目を細めれば、東尾コーチは「今村のシュートは広島で見た時から良かった。(チームとして)あのシュートの生かし方を考えないといけない」と絶賛。現役時代にシュートで右打者の懐を攻め続けた同コーチが認めるのだから、本物だ。

 昨年11月の代表強化試合キューバ戦は2回2奪三振で完全投球。国際舞台でシュートが通用することを証明している。第1、第2ラウンドで強敵となるキューバ・グリエル、韓国・李大浩など右の強打者キラーとしても期待がかかる。

 侍ジャパンは守護神候補の浅尾が右肩張りの不安を払拭(ふっしょく)できず、救援陣再編の可能性が出てきている。一躍、最年少の今村の名前がクローズアップされ始めた。今日17日は広島の中継ぎとして、練習試合で日本代表相手に1イニングを投げる。「結果を残す、それだけです。(投げにくいとかは)気にせずやっていきたい」。実直な語り口の奥に、闘志がみなぎっていた。【佐井陽介】