力士が土俵に上がった時につける力水。その水は、福岡・直方市の米菓製造会社「もち吉」が無償提供している。元は餅やあられなどの製造に使用する北九州市の福知山山系の地下水を、「力水」として商品化した。本場所で使われ始めたのは、森田長吉社長の相撲愛があったからだ。

 91年、直方市で初めて巡業を開催。相撲好きな森田社長が開催のお礼に何かできないかと「力水」の使用を相撲協会に願い出た。宣伝効果は見込めない、輸送費も出せない、という協会側に「宣伝するつもりはありません」と、おとこ気。92年春場所から「力水」の無償提供が始まった。

 13年名古屋場所からは500ミリリットルペットボトルの力水を平日は2000本、土日は3000本を観客に無料配布している。きっかけは10、11年と不祥事で中止となり、3年ぶりに開催された12年の冬巡業。暗い話題が続く角界を盛り上げたい、力士と同じ気持ちになって観戦して欲しい、という森田社長の思いに協会が賛同した。全43の相撲部屋にも1場所ごとに提供。おとこ気の詰まった力水をつけて、力士たちは1年の納めの場所、千秋楽に臨む。【佐々木隆史】