記念すべき第100回夏の甲子園は、大阪桐蔭の史上初となる2度目の春夏連覇で幕を閉じた。今年も数々の名勝負が生まれたが、特に公立の星と言われた金足農(秋田)の活躍には、多くの大相撲ファンもくぎ付けになったのではないか。と同時に「あの人も金足農だよね」と思った方も多いはず。そうです。ベテランの十両豪風(39=尾車)の母校です。

金足農が準決勝進出を果たした翌日の19日、札幌市で行われた夏巡業で報道陣から囲まれた豪風は、目を輝かせながら母校への思いを爆発させた。

「今まで眠っていた感情、細胞が後輩たちに覚まさせてもらった。長くやっていると忘れていくものがあるけど、それを覚まさせてもらった。ベスト8になるだけでもすごいことなのに。言い方は悪いけど、地方の公立校が強化選手を集めた私立の高校を倒す、これ以上の快感はないですよね。秋田には秋田商とか大曲工とかあるけど、金足農というのがもうね」

話し出すと止まらなかった。他にも近江戦でのサヨナラ2ランスクイズや、エース吉田輝星について熱弁したり。最後には「球児は何食べてるんでしょうね。やっぱりニンニクとかビタミンB1たっぷりの豚肉とか食べてもらいたいね。お米もあきたこまちを食べてね」と、もはやOBというよりは親目線だった。

それもそのはず。長男海知君は現在10歳で「自分の息子より6、7歳上ぐらいだから子どものような感覚だよね。何度も涙が流れそうになったから、人前では試合を見られなかった」とこっそり見ていたとか。さらに「途中からは最初の整列だけで泣けてました」と涙なしでは見られなかったという。

優勝こそ逃したが、後輩たちの勇姿は豪風の心を動かした。「北海道にいた時にベスト8、準々決勝進出とかがあって、決勝の日の秋田巡業も盛り上がっていたけど、関東でもかなり盛り上がっていたのにびっくりした。会場でも『金足農業』って言ってくれるファンが多かった」と感動。だからこそ「次は自分の番ですよ」とモチベーションが高まった。

名古屋場所では東十両筆頭の位置で4勝11敗。秋場所(9月9日、東京・両国国技館)では、十両中位から下位が濃厚だ。大きく負け越してしまえば最悪、幕下への陥落もあり得る状況。ただ悲愴(ひそう)感は当然ない。「とてつもない力になりましたから。これも何かの縁だなと。ここで先輩の背中、意地を見せないといけない。見せてやりますよ」と鼻息を荒くした。狙うはもちろん、後輩たちが果たせなかった“優勝”の二文字だ。【佐々木隆史】