大相撲春場所は史上初の無観客開催で15日間をやり遂げた。その中で主役の1人を担ったのが碧山。終盤3連敗で11勝に終わったが、一時は単独トップに立つなど優勝争いを盛り上げた。

碧山は欧州のブルガリア出身。新型コロナウイルス感染は欧州で拡大し、その影響に話が及んだ。実家については「自分のところは都会ではないから大丈夫」と話した上で、「毎日電話してますよ。心配だから」と話していた。

碧山の地元ではやはりマスクを着ける習慣はなく、売っているところも希少。日本から送らないのか聞いたが「送りたいけど、売ってないでしょ。どこに売ってるんですか」と厳しい表情で返された。

東京に1人残すビオレタ夫人も、厳しく「外出禁止」を言い渡したという。「向こうも1人。寂しいのは分かっている。よく我慢している」。外出でもできない碧山にとって、約1時間半の夫人との電話が唯一の癒やしだったという。

その2人の共通の話題は愛犬のMOLLY。12勝3敗と好成績をあげた昨年の春場所後から碧山家に加わったトイプードル。「小さくてね、犬とは言われないんです」。近くにいた栃ノ心が「人形だよ」。それほど溺愛する愛犬も、心の支えとなっていた。

相撲界における外国出身力士の活躍はすさまじい。何より驚かされるのが、日本での生活への順応で言葉も達者だ。碧山は「ちゃんこ場で勉強した」という。他の競技では通訳がつき、言葉をやりとりするが、相撲界では独自で乗り越えなければならない。碧山は日本語を学ぶためにノートを作り、耳にした単語をアルファベットで記し、覚えていったという。

相撲は日本独特の文化であり、神事とされる。その意味を理解しなければ、成功はできない。ブルガリア出身の碧山を取材する中であらためてそんな思いを強くした。【実藤健一】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)