一時は救いのない地獄を見たからこそ強い。元幕内で西幕下30枚目の炎鵬(30=伊勢ケ浜)が6勝1敗で幕下復帰の今場所を終えた。生命にもかかわる首の負傷(頸椎=けいつい=椎間板ヘルニア)で23年夏場所の途中休場を含め7場所連続休場。昨年名古屋場所に序ノ口から奇跡の復帰、来場所は一気に関取復帰も狙える幕下上位が確実となった。
「実感がないんですよね。今、自分が相撲をとれているのが不思議な感覚」。のちに脊髄損傷も判明し、医師からは相撲をあきらめるよう宣告された。「治療方法がないと言われた。救いの手がない真っ暗な状態で、何百回も辞めようか悩みました」と振り返る。
現役に踏みとどまらせたのが周囲の支え。「周囲で経験した人はいないんで相談もできない。でも多くの人から『辞めるな』と励まされた。言葉に救われたのが大きい」と明かす。
炎鵬は言う。「与えられたチャンスだと思うんですよね。こういう経験は与えられた人にしかできない。それを無駄にするかは自分次第。よくなっていく今の状態が楽しみであり、生きがいでもあります」。一方で「番付を上げれば相手も大きく変わる。怖さはあります」。ひときわ大きな拍手と歓声を浴びる人気力士はその内側で闘っている。【実藤健一】


