大関大の里(24=二所ノ関)が2場所連続優勝を果たした。これで間違いなく、稀勢の里以来8年ぶりの日本出身横綱になる。「日本人横綱」でなく、「日本出身横綱」とするのは理由がある。
照ノ富士は2021年7月の名古屋場所で横綱昇進を決め、8月4日付で日本国籍を取得した。新横綱として臨んだ9月の秋場所では、すでに日本人になっていた。
という事情を考慮すると「稀勢の里以来の日本人横綱」という表現は不正確になる。そのため「稀勢の里以来の日本出身横綱」になる。
考えすぎかもしれないが、これでいいのだろうか。「稀勢の里以来の日本出身横綱」という言い方は、日本人になった照ノ富士親方に対して、失礼にならないか。
照ノ富士親方に聞くと「全然そんなこと思ってない。当たり前のこと。○○出身って出身地を言うでしょう。嫌な気持ちになる人もいるかもしれないけど、オレは違和感ない。本当のことだもん」と答えてくれた。
大相撲では、取組前に力士名だけでなく出身地もアナウンスする。力士名は、地元にちなんで命名されることも多い。「江戸の大関より土地の三段目」という言葉もある。郷土出身力士を応援する文化が大相撲には根付いている。ただし、アナウンスの際、「日本出身」とは言われない。
近年では、アメリカ出身の武蔵丸は横綱昇進前、モンゴル出身の白鵬や鶴竜は昇進後に日本国籍を取得した。
8年前、横綱稀勢の里が誕生した。稀勢の里は若乃花以来19年ぶりの日本出身横綱であり、武蔵丸以来18年ぶりの日本人横綱だったが、枕ことばは必ず前者だった。
当時、元武蔵丸の武蔵川親方に聞くと「俺はあまり気にしないよ。そんなのちっちゃい。気にしないよ」と言っていた。アメリカ国籍だった大関昇進時、口上で「日本の心を持って相撲道に精進致します」と述べた。武蔵川親方は「そういう気持ちでやらないとうまくいかないからね」と言っていた。
別の見方もある。
宮城野親方(元横綱白鵬)は「マゲを結った人間に国籍は関係ないのでは。音楽に国境はないっていいますしね。いいように記事にしてくれたら、それでいいですよ」と話した。
モンゴル出身力士の先駆者でもある大島親方(元関脇旭天鵬)は「国籍変更はでかいこと。日本のパスポートをもって、日本のルールでやっているから、(国籍は)関係ないと思う。日本語を覚えてやっているしね。そういうの関係なしに応援してくれるといいね。お墓は日本につくる。そういう覚悟でやっているから」とやんわり指摘した。
好角家の多くは、外国出身力士の努力を知っていて、国籍に関係なく応援している。
新横綱誕生はめでたいこと。それは大の里が日本出身だから、日本人だから喜べるという問題ではない。大の里が努力の末に勝ち取った地位だから尊い。ただ、日本人力士だから、日ごろは大相撲に関心のない人を巻き込んで興味を持ってもらえることもまた、事実だとは思う。
今後も、事実として「稀勢の里以来8年ぶりの日本出身横綱」と報じるが、大事なことは忘れないようにしたい。【佐々木一郎】


