名伯楽に師事するアマエリートがMVPを獲得した。フライ級の中谷潤人(18=M・T)が1回1分40秒に左カウンター1発でTKO勝ちを飾った。中学生で全国2連覇後、高校には進まずに単身米国留学。元2階級制覇王者の畑山隆則氏を支えた米国人トレーナーのルディ・エルナンデス氏宅にホームステイして、指導を受けた。屈指の逸材は、12月23日には西軍代表と全日本新人王を狙う。

 勝利者インタビューが印象的だった。質問が終わると、中谷は「いいですか」と切り出した。続けたのは「努力という力がまた僕を成長させてくれました。ジムの方、応援してくれる皆さんのおかげで勝利があります」との感謝。その自発的な行動は、18歳という年齢を感じさせなかった。

 開始直後に左ボディーをヒットさせて腹部にパンチを集めると、トレーナーの「上も狙え」の声に即座に結果。左カウンターを顔面に打ち込んで、あおむけにリングに転がした。「手応えあった。最初のタイトルをスッキリした形で良かった」と涼しい顔で言った。

 最初-。その発言に視線の高さは際立つ。三重・東員中1年で競技を始め、U-15全国大会2連覇。卒業後、向かったのは米国だった。「本当に強い選手がいるところでやりたかった」。元2階級王者の畑山氏らを育てたエルナンデス氏の自宅に住み込んだ。12回のスパーリングをする日もあった濃密な日々。計9カ月ほどの留学後の今も、連絡して助言を受ける。

 7月には三重から父澄人さん(40)が上京し、2人暮らしに。飲食店を閉める決断をした父が作る食事に「感謝しかない。鍋がおいしい」と笑顔を見せる。大人びた印象は、米国経験も大きいだろう。ホープは「これは通過点」とさわやかに言った。【阿部健吾】

 ◆中谷潤人(なかたに・じゅんと)1998年(平10)1月2日、三重県員弁郡生まれ。小学生では空手を習っていたが、小5で見たボクシングの試合に魅了され、中1から競技開始。アマ戦績は16戦14勝(10KO)2敗。17歳でプロテストに合格し、15年4月にプロデビュー。戦績は8戦8勝(7KO)。好きな選手はリカルド・ロペス。趣味は釣り。左のボクサーファイター。170センチ。