67歳の藤波辰爾が9月17日、プロレス・ヒートアップ川崎大会で、98年新日本IWGPヘビー級以来となるシングルのベルトを手にした。ヒートアップの「ユニバーサル&PWLWORLDCHANPIONSHIP」2冠王者のTAMURAからコブラツイストでギブアップを奪い、タイトルを奪取。「(デビュー)50周年の年にこんなビッグなプレゼントがあるとは。若いころを思い出させてくれてありがとう」。15分を戦い抜いたレジェンドは疲労困憊になりながらも充実感を漂わせた。これまでいくたの名勝負を重ねてきた藤波だが、思い起こされるのは84年に起きた新日本プロレス「雪の札幌テロ事件」。37年前のあのカオスを振り返る。

襲われた長州、藤波の疑心、藤原の台頭

新日本プロレスに前代未聞のテロ事件が発生した。1984年2月3日、雪まつりでにぎわう札幌市の中島体育センターは、超満員の7000観衆で埋まっていた。

藤波辰己(辰爾)と長州力による「名勝負数え歌」の総決算とされたWWFインターナショナルヘビー級選手権。花道を入場する挑戦者長州に、「前座の実力者」と称された藤原喜明が鉄パイプを手に襲いかかり、ひとしきり暴れるとファンの波に紛れるように姿を消した。額を割られた長州の顔面は鮮血に染まる。

異常を察知した王者藤波がリングに上がり、混乱の花道に視線を送る。長州は維新軍の仲間に支えられてリングにたどり着き、制止を振り切ってマットを踏んだ。もつれ合う2人に新日本本隊、維新軍が入り乱れて収拾がつかずに試合は不成立、ノーコンテストとジャッジされた。

興奮し、混乱した藤波は仲裁に入った山本小鉄審判部長をボディースラムで投げ捨て、坂口征二選手兼副社長にも殴りかかる。そして、黒のショートタイツとリングシューズのまま雪が降り積もる会場外に飛び出し、タクシーを拾って走り去った。

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9月17日、プロレス・ヒートアップ川崎大会で藤波辰爾は2冠王者に輝いた(撮影・柴田隆二)
9月17日、プロレス・ヒートアップ川崎大会で藤波辰爾は2冠王者に輝いた(撮影・柴田隆二)
1980年代「名勝負数え歌」と称えられた一連の闘いでプロレス・ブームを牽引した長州(右)と藤波(写真は1984年7月5日新日本大阪大会)
1980年代「名勝負数え歌」と称えられた一連の闘いでプロレス・ブームを牽引した長州(右)と藤波(写真は1984年7月5日新日本大阪大会)