新日本プロレス50周年の大トリで、オカダ・カズチカ(35)が頂点に返り咲いた。IWGP世界ヘビー級王座戦で“宿敵”ジェイ・ホワイト(30)を33分3秒、レインメーカー(短距離式ラリアット)で仕留め、2度目戴冠を果たした。昨年10月に亡くなったアントニオ猪木さんの追悼大会で、涙ながらに新時代の幕開けを宣言。観客とともに「いくぞー、1、2、3、ダァーッ!」と猪木さんの決めぜりふを天国の「燃える闘魂」に届けた。
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天国の“燃える闘魂”は、レインメーカーに何を感じただろうか。東京ドームに詰めかけた2万6000人から注がれた嵐のような歓声が、その答えだった。オカダがここまで1勝4敗と苦杯をなめてきた“宿敵”ホワイトを破り、新日本の至宝IWGPを奪還した。「猪木さんが作った新日本。闘魂を受け継いで、100年、200年続くように盛り上げていきます」。3年ぶりに声出し解禁となった会場で、新王者は涙を流して約束した。
猪木さん、俺たちの戦いは届きましたか-。オカダが赤い襟付きのドル柄のガウンを脱ぎ去ると、猪木さんをほうふつとさせる黒一色のコスチュームが現れた。試合は頭脳戦、打撃戦に発展。幾度となく劣勢に立たされたが、闘魂を背負う男に負けは許されなかった。猪木さんの得意技の延髄斬りで難局を打破。過去に苦しめられてきた相手の必殺技ブレードランナーで逆転すると、最後は33分3秒、渾身(こんしん)のレインメーカーで刈り取った。
もう1つ、負けられない理由があった。昨年8月、守るものが増えた。妻で声優の三森すずことの間に、第1子となる男児が誕生。リングを降りると「ようやく寝返り打ったんですよ」とパパの顔を見せる。史上4人目となる連覇を達成した昨年のG1直後には、プロレスラーとしては前代未聞の約半月間の育休も取得。どんなに疲れた時でもその笑顔1つで元気になれる。「僕がけがをしたら妻の負担も大きくなる。元気で家に帰らないといけない」。引き締まる思いだった。
俺がやる。その自覚は、家庭だけではなくプロレス界全体にまで及ぶ。昨年10月に猪木さんが死去。来月には武藤も引退する。新日本は50周年を超え、プロレス界は過渡期を迎えている。だが、そのリングの中心にいるのは常にオカダでなくてはならない。「俺に任せれば安心だと、猪木さんにもファンに思わせられる」。そう力強く語った。
試合後には猪木さんの代名詞「1、2、3、ダァーッ!」の掛け声で締めた。「猪木さんの見ていた景色が少しは見られたかな」と笑った。闘魂の血は巡る。「これではまだ満足はできない」。王者は新たな半世紀の幕開けを、天に宣言した。【勝部晃多】

