47戦無敗の人気格闘家でプロボクサーに転向した那須川天心(24=帝拳)が満点の白星デビューを飾った。

日本バンタム級2位の与那覇勇気(32=真正)とのスーパーバンタム級6回戦に臨み、2回に右フックでダウンを奪って3-0の判定勝ちを収めた。ジャッジ3人中2人がフルマークをつけて日本ランカーに圧勝。所属ジムの本田明彦会長(75)から100点の高い評価を得た。キック時代と変わらないド派手な入場で会場を盛り上げ、トータルで「天心劇場」を演出した。

   ◇   ◇   ◇

ボクシングの舞台でも那須川は存在感十分だった。日本ランカー与那覇に対し、余裕を持ってクールに攻めた。「攻撃はほぼ全部見えたかな」。2回、バランスを崩した相手に右フックを合わせてダウンを奪うと、3回は相手の右目上をパンチで切り裂いた。4回には左カウンターから16連打のラッシュ。「終わらせてやろうかと思ったけど」。TKOまでは奪えなかったが見せ場を演出。トリッキーにノーモーションの左で何度も相手顔面を打ち続け「倒したかったというのはあるが、6回を経験できたのは大きい」とうなずいた。

3分3回(延長1回)が基本となるキックルールでは味わうことのない6回でも充電切れはなかった。「スピード的にも良かった。空間把握もできた。警戒すぎたのが大きかった。もっと倒せるようなパンチを磨きたい」。繊細な準備が“売り”の男らしく、反省も忘れなかった。

2度の米ラスベガス修行などを含め、この半年間、那須川の指導を続けた所属ジムの本田会長は「私からすると100点満点。6カ月の練習でできることはすべてやった」と褒めちぎった。さらに「3カ月後か4カ月後は分からないが、1年くれれば本物になっている」と太鼓判。これで日本スーパーバンタム級ランク入りは確実となるが、同会長は「1年後には日本でトップになっているはず」と強調した。

デビュー戦の花道。那須川は炎と火花の演出をバックに姿をみせた。キック時代と同じ矢沢永吉の「止まらないHa~Ha」に乗ってリングイン。米人気リングアナのジミー・レノンJr.氏にコールされる豪華な登場だった。

「倒せはしなかったが、ダウンを取って勝てた。ボクサー那須川天心として見てくれるのではないか。必ずボクシングでも世界を取ろうと思っている」。

常に「対世界」を見据える那須川の第2章が、ド派手に始まった。【藤中栄二】

◆1R

開始から与那覇が前に出て右強打を振るうも空振り。その後はサウスポースタイルの那須川が、与那覇を翻弄(ほんろう)した。

30秒すぎに左ボディーアッパー2連発で会場を沸かせ、1分半すぎにワンツー2連発。さらに残り30秒で左ストレートをカウンターで決める

【日刊採点】10-9那須川

◆2R

開始早々、那須川が右フックでダウンを奪う。その後は左ストレート、左ボディアッパーを面白いように決める。

1分50秒すぎに左ストレート連打で与那覇を後退させる。トリッキーな動きで相手を幻惑するパフォーマンスも。

与那覇は那須川のスピードについていけない。

【日刊採点】10-8那須川

◆3R

残り1分から那須川がエンジン全開。強烈な左ストレートを次々と決める。残り30秒には右フックも。与那覇は右目尻をカット。

一方的な那須川のペースに

【日刊採点】10-9那須川

◆4R

与那覇は開始から前進するもパンチはことごとく空を切る。1分20秒すぎに那須川のワンツー、右から左ボディーブローと次々ヒット。

2分20秒すぎに強烈な左ストレートを決めると、一気にラッシュ。与那覇をロープにつめてめった打ち。

与那覇はなんとか倒れずに踏ん張る

【日刊採点】10-9那須川

◆5R

50秒すぎに那須川の左ストレートが強烈にヒット。与那覇は大振りの左右パンチを振り回すが、那須川はすべて外す。

2分すぎに与那覇が連打も那須川は堅いガードで1発も食わず。

【日刊採点】10-9那須川

◆6R

那須川はフットワークをつかって距離を取り、ジャブを突く。無理をしないボクシングに。

中盤に与那覇の左右ボディーフックがヒット。しかし、残り30秒から左ストレートを皮切りに那須川の連打が次々とヒット。

与那覇も踏ん張る。そのまま終了のゴングが鳴る。

那須川が3-0の大差判定勝ちを収めた。

【日刊採点】10-9

 

<那須川天心(なすかわ・てんしん)>

◆生まれ 1998年(平10)8月18日、千葉・松戸市生まれ。

◆名前の由来 父弘幸さんが「天に心を持て」と命名。天のような大きな心を持ち、感謝の気持ちを持って欲しいと願いが込められている。

◆スポーツ歴 父弘幸さんが元サッカー選手で中学時代に全日本制覇の経歴を持つため、最初はサッカーを習うもGK。5歳で極真空手を開始。小学5年でジュニア世界大会優勝。その後、キックに転向。

◆キック&総合格闘技 14年7月、15歳でプロデビュー。15年5月にプロ6戦目の16歳でRISEバンタム級王座を獲得。16年12月にRIZINに参戦し、総合格闘技にも挑戦。18年6月、初代RISE世界フェザー級王者に。22年6月、K-1の元3階級制覇王者・武尊に判定勝ち。

◆家族、スタイル 両親、妹2人、弟。身長165センチの左ボクサーファイター。体重は61キロ(通常)。