ボクシングの現役王者が富士山登頂に挑み、成功した。WBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級、東洋太平洋同級王者力石政法(28=緑)が3日に日本一の頂、富士山を制したと明かした。
力石は6月10日に元世界3階級制覇王者の亀田興毅ファウンダー(36)が手がける「3150FIGHT」の下部的興行「SURVIVAL」(エディオンアリーナ大阪第2)で、世界前哨戦と銘打たれた契約134ポンド(約60・7キロ)の10回戦(対戦相手未定)に臨む。試合の約1カ月前。リスクは覚悟の上で日本一の山に挑んだ。
全員初登山の仲間3人を加えた4人で五合目からアタックを開始した。富士登山の解禁は7月1日。登山は禁止されていないが、雪が残る過酷な山道を別組の登山上級者にまじり、力石いわく「ド素人」が登った。力石は「最近、マンネリ化していた日常を何とかしたかった。新しい刺激がほしいなと。普通の登山シーズンでは意味がない。敷かれた道を歩くのは自分じゃない。自分に挑戦したかった」とあえて厳しさを選んだ。
「日本一のところに行ってみたいという軽い気持ちでした。自分なら(アスリートとして)楽勝でいけると思っていました」
しかし、準備段階で登山に詳しい人から「山をなめるな!」と叱られた。逆に闘志に火がついた。「ダメだ」と言われていることを克服した先に見えるもの。それを求めて3776メートルの頂を目指した。
「正直、想像の3倍えらかった。ボクシングで使う体力とは全く違う。自分より明らかに年上のじいさんがスタスタ上がるのに。それだけに(登頂した時は)達成感がやばかった」
兄は元WBC世界ライトフライ級王者の矢吹正道。兄弟で世界のベルトを巻くことが究極の夢だが、その過程で何をすべきか模索して、力石は富士山を登った。「なめていたけど、ちょっと間違えば滑落して命を落とす危険を感じた。人生で3本の指に入るえらい経験だった。それはボクシングにも通じる。少しの間違えが命取り。それを富士山に教えてもらいました」。
力石はドライだが、同行者は登頂を果たして涙を流していたという。貴重な経験値を積み上げて、世界を目指す。「何か大きくなった感じがしますね。また、違う山も登ってみたい」。力石は自身のプロフィルに趣味「登山」を加えると明かした。【実藤健一】
○…力石の兄、矢吹はこの日、こどもの日恒例のスパーリング大会を開催した。今年で5回目。昨年までは名古屋市内のジムが会場も、第1回の16人が今年は44人と参加希望者の増加で愛知・大府市内の体育館で実施した。「ボクシングの楽しさを知ってほしい」と始めた。「負けてしまうと(子どもたちに)合わせる顔がない」と自身への刺激にもなる。次戦は7月にも世界前哨戦を計画。子どもたちの笑顔に再び世界王座を目指すパワーをもらった。
◆矢吹と力石 不滅のボクシングマンガ「あしたのジョー」の主人公とそのライバルからとったリングネーム。兄の矢吹が本名の「佐藤」じゃおもしろくないと名付け、弟もならった。

