4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(33=大橋)が32戦無敗同士の頂上対決を制し、防衛成功(WBC、WBOは8度目、WBA、IBFは7度目)した。WBA、WBC、WBO同級1位中谷潤人(28=M・T)の挑戦を受け、3-0の判定勝利。4団体統一王者として歴代トップ独走の7度目防衛となった。序盤は神経戦、中盤から決定打を狙う激しい攻防を展開。中谷が左目の眼窩(がんか)底骨折が疑われるほどの激闘を繰り広げ、最後は井上が勝利。「主役」として2年ぶり2度目の東京ドームのメインを締めた。
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地鳴りのような歓声が響くドームの中心で、井上はレフェリーから右手を挙げられた。2~4ポイント差をつける3-0の判定で下した。先にリングから下りた中谷に向け「対戦を引き受けてくれた中谷選手、今日はありがとうございました」と敬意。昨年3月、ボクシング年間表彰式で対戦を呼びかけた後、井上は世界戦3勝、中谷も世界戦1つを含めて2勝。両者ともに国内記録のデビューから32連勝という無敗対決を制した井上は「わずかな可能性での実現。1年間、お互いが無敗でこなしたからこその実現だった」と安堵(あんど)の笑みをみせた。
米老舗専門誌ザ・リング選定のパウンド・フォー・パウンド(PFP=体重差が同じと仮定した最強選手)ランキング(井上2位、中谷6位)入りする両者らしく東京ドームは緊張感に包まれた。お互いの距離感を測りながら一撃を狙う序盤。中盤は挑戦者らしく中谷から圧力をかけられた。決定打を狙うピリピリした展開の中、井上はノーモーションの右を確実にヒットさせた。「あの入りは想定内。(中谷は)気持ちの強いファイター。(PFP)ランク入りする選手だからこそ、今日の勝ちに価値がある」とうなずいた。
史上初の日本人同士による4団体統一タイトル戦を制し、世界戦通算勝利数も歴代2位の28勝に伸ばした。2年ぶり2度目の東京ドームのメインは88年、90年の元統一ヘビー級王者マイク・タイソン(米国)に並ぶ偉業でもあった。ボクシング興行史上最多となる5万5000人以上の観衆に向け、井上は「また東京ドームに戻ってきたい。また皆さん集まって、この景色をみせてください」と宣言した。
ボクシング興行に力を入れるサウジアラビア総合娯楽庁のトゥルキ・アラルシク長官がVIP席で視察。同長官のバックアップを受け、次戦は「ドリームマッチ」に臨むことが浮上中。井上は「この先…ちょっと未定」と苦笑したが、さらに大舞台が用意されそうだ。4団体統一王者としてスーパーバンタム級にとどまるのか。日本男子初の5階級制覇し、フェザー級転向の選択肢もある。いずれにしても井上が「主役」の時代は続く。【藤中栄二】
◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。父真吾氏の影響で小学1年から競技開始。高校でアマ7冠。12年7月にプロ転向。14年4月、6戦目でWBC世界ライトフライ級王座を奪取。14年12月、WBO世界スーパーフライ級王座を獲得し2階級制覇。18年5月、WBA世界バンタム級王座を獲得し3階級制覇。19年5月にIBF同級王座、同年11月、WBSS同級制覇。22年12月、史上9人目の4団体統一王者に。23年7月にWBC、WBO世界スーパーバンタム級王座を獲得して4階級制覇。同12月に史上2人目となる2階級での4団体統一に成功。身長164・5センチの右ボクサーファイター。

