日本相撲協会は1日、大阪市で臨時理事会を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて大相撲春場所(3月8日初日、エディオンアリーナ大阪)の無観客開催を決定した。

本場所の無観客開催は史上初。場所中に感染者が出た場合は、その時点で春場所は中止になる。力士は朝必ず体温を図り、37・5度以上なら休場。勝ち力士や控え力士が行う力水は口をつけず、形だけにするなど感染防止を徹底する。なおNHKの中継は実施される。

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日本相撲協会が史上初の決断に踏み切った。臨時理事会後に行われた記者会見に出席した八角理事長(元横綱北勝海)が、春場所の無観客開催を発表。会議は約2時間半に及び、中止の声も上がるなど慎重に議論を重ねた結果「お客さんへ迷惑をかけられないと思った」と観客への感染防止を最大の理由に挙げた。本場所中に会場に入れるのは力士ら協会員と報道陣のみ。1日に7000人前後の観客が入る見込みだったが0に。「力士には厳しい土俵になる。気持ちの高め方は非常に難しいと思う」と力士を思いやった。

さまざまな懸案事項についても話し合った。本場所中に感染者が出てしまった場合については「現状では中止にします」と明言。また2日には師匠会を開き、各師匠に弟子らの平熱を測るように要請する。そして本場所中は毎朝体温を測定。37度5分以上の場合は休ませることも決まった。

土俵周りも通常と大きく異なる。十両以上の取組で、勝ち力士や控え力士が土俵に上がった取組前の力士に、ひしゃくにくんだ水をつける力水。取組前の力士は口をすすいで身を清めるが「濃厚接触ではなく濃密接触」と芝田山広報部長(元横綱大乃国)。八角理事長は「形だけにする。(ひしゃくに)口をつけないようにする」と形式的なものにする。報道陣の土俵下での写真撮影や支度部屋への出入りも禁止。取組は2階席から見て、支度部屋の外に取材エリアを設けるなどして接触を減らす。

課題は山積みだ。完売している前売り券は払い戻しを前提に、どのように対応するかをこれから検討。関係者によると、10億円余りのチケット収入が消えるという。春場所後の29日から始まる春巡業についても、開催か延期かを検討するとした。また力士らの会場への移動方法について八角理事長は「公共機関ではなくバスや車を使って場所入りするようにしようと思う」。しかし取組時間は力士によって違う上に、宿舎の場所もバラバラで現実的に厳しい。史上初の決断に、角界が大きく揺れている。